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亮はコン・ティンをおんぶすると、ケントにうなずいて見せた。
――かっこいいじゃん、亮!
緩んだ頬を引き締めて、「よし、行くぞ」と大きく前に一歩踏み出した。足が石の継ぎ目を踏んだ。
『気をつけろ』
「ムオイ? 気をつけろってなんで」
言い終わるか言い終わらないうちに、足を乗せた石がガコッと音を立てて動いた。
ヒューンッとかすかに高い音が聞こえてくる。
「なんの音……?」
バシッと頬をムチで打たれる。
「痛って! 誰だ! 魔物か……?」
『違う。魔物の気配ではない。デバターがかつて作った侵入者よけであろう』
「わあっ!」
ヒューンヒューンと空気を切り裂き、あちこちからムチが飛んでくる。コン・ティンがフラフラと前に出てきた。
「コン・ティン、危ない!」
『ですが、アレは植物……、うちがなんとか……』
――植物?
飛んでくるムチに注意しながら、ランタンをかざして目をこらす。あれは、建物を締め付けている樹だ! 枝から何本も垂れ下がってる紐みたいなものが、ムチになって飛んできてるんだ
「ムチじゃなくて、木の枝だったのか! でもコン・ティンの言うことをまったく聞いてないぞ」
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