4/20
前へ
/155ページ
次へ
 オレが話しているのは日本語(の断片)だったけど、スレイには意味がわかったみたいだ。スレイの隣にいる鳥の尾羽には、見覚えのあるレース模様がある。 「あっ! お前っ!」 『ええーん、うっく…ヒック』  しかもこの泣き声って、ばあちゃん家で聞こえた……! 「ちょと、クルン。わたしの泣き真似、だめ! はずかしいよっ」  スレイが慌ててクルンのくちばしを手でふさぐ。あわてっぷりがかわいい。それで少し落ち着いた。すーはーと深呼吸する。 「あのさ、オレ、この鳥がキミの、ええとスレイの泣き真似してて、それで追いかけてたら崖から落ちて、ここに来ちゃったんだ。スレイ、元気みたいだし、もう帰るよ。どうやって帰ればいい?」  スレイとクルンは顔を見合わせた。 「あー、えーと、ね? ケント、汗かいている。暑い?」 「あ」  スレイはノースリーブの白いワンピースみたいな服一枚だ。オレはというと、スノーブーツにダウンコート、裏ボア生地のズボンだ。なにしろ雪山から来たんだから。 「脱ぐ、ね」
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加