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 いつもなら、どんな樹もコン・ティンの命令に従うのに、この木の枝には制御がまったくかかからない。 『デバターの支配が強すぎるのか……? この樹は何かおかしいです』コン・ティンの口調に悔しさが滲む。 「デバターの支配……? ってことは、スレイは大丈夫か?」 「わたし、ダイジョブ」  スレイはすぐに答えた。けれど、呪術を使っていないのにスレイの胸は淡く光っている。 『遺跡というこの場に残されたデバターの残滓(ざんし)、つまり残りかすが樹の気根を操っているのだ』 「幽霊みたいだな」 「ひっ!」 「しまった、嘘、幽霊っていうのは、ただのたとえ話! とにかく、その気根とかいうヤツをなんとかしないと」 『急げ。たかが残滓といっても、その娘と共鳴しているようだからな、猶予(ゆうよ)はあまりなさそうだぞ。我はデバターが目覚めてもいいのだが、お前たちは嫌なのだろう?』 「もちろん! 亮、コン・ティンとスレイを守っててくれ」  オレは亮の返事を待たずに飛び出した。ムチのような(つる)状の根は、しなってあちこちから飛んでくる。なにしろ建物を覆っているんだ。いくらでもある。
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