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気根は柔らかに、それゆえに凶悪にうねり、飛んでくる。根の先端をつま先ではじくように蹴る。それでも根の進路を変えて、その場をしのぐことが出来るだけだ。
「コウモリみたいに気絶もしないし! だあっ! どうすりゃいいんだよ」
だんだん息が上がってきた。上部から飛んできた気根をさばいていたら、横からの気根がビシッと腹にあたった。跳ね飛ばされて背中から壁にぶつかって、床に落ちる。
「グ……、ゲホッ、ゲホッ」
咳と一緒に涙がにじむ。すぐさま次の根が飛んでくる。横に転がって避けると、今までいた床のレンガが砕けて埃が舞い上がる。白いと思っていたレンガの断面は赤く、気根の凶悪さを物語ってるみたいだ。
「おわっ! マジか……」
慌てて跳ね起きる。熱い汗が冷や汗に変わった。
――このままじゃ、やられる。
立ち上がって走る。動いていれば、狙いが定まりにくいはずだ。それに気根は途中で方向を変えられないはず! たぶん!
ゆっくり考えている余裕はなく、右に左に走り回りながら、なお襲いかかる気根を蹴り飛ばす。
――けど、この後どうする……?
『我にまかせよ』
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