13/20
前へ
/155ページ
次へ
「う~! よくわかんねえけど、オレはっ! スレイを、皆を、助けたいんだーーーーっ!」 『……承知した』  ムオイが応えると、宿っている右腕が熱くなった。そしてその熱が全身を巡っていく。コブシを握り込むと、二の腕にバンッと力がみなぎった。細胞の一個一個が目覚めたみたいに感じる。  ヒュンッと目の前に飛んできたひときわ太い気根をかわして掴む。気根が跳ね上がり、オレを振り落そうと上昇する。石造りの天井がグンと目の前に迫ってくる。 「ケントッ! たたきつけられるぞっ!」  亮が叫ぶ。 「大丈夫っ!」  すべてがスローモーションのようにゆっくり見える。オレは近づいてくる天井との距離を目測し、捕まっている気根を強く握った。足を振り上げ、鉄棒で大車輪するみたいに回転する。天井を足で蹴って飛ぶと、気根の太い部分に着地して走った。オレを振り落とそうとうごめく気根の上を綱渡りするみたいに。オレを捕まえようと追いかけてくる気根よりずっと速く!   巨木の幹に辿り着くと、その根本にジャンプして飛び降りた。遺跡の中に根をおろし、デバターの残滓の力で、侵入者を拒んできた偉大な樹だ。手を触れると、気根の攻撃がなんの前触れもなく止んだ。
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加