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「わたしがお姫様になったら、みんなが救われる?」 「そう。アルタンティスの姫に」  バビロンが指差したのは、街の外にある広大な樹林の方角だった。 「アルタンティス?」 「そう。アルタンティスは人間が言う異形のもの(カトゥルー)たちが静かに住まうところだ。しかし土地を欲している人間は無闇に攻め入り、日々互いの命を削っている。そしてとうとう明朝には火を放ち大戦を起こす」 「兵隊は街を守るために戦っていたんじゃ……」 「一方的に攻め入っていたんだ。命がけとなれば異形のもの(カトゥルー)も手は抜けない」 「そんな……」  スピカは話を聞きながら、昼間見た小さな異形のもの(カトゥルー)を思い出していた。 「アルタンティスは自由な大地だ。しかし、このままでは人間が全てを壊してしまう。そなたが姫となるなら、城ができ国境ができる」 「どうして私が?」 「資格を持っているとでも言うべきかな。さあ。ここで人のまま人として扱われずに生きるか。アルタンティスで異形のもの(カトゥルー)の姫として生きるか」 「わたしがお姫様になれば争いはなくなるの?」 「正直、人間しだいだ。だが境界の存在は大きいだろう」  アルタンティスで姫になるということは、人間と決別し異形のもの(カトゥルー)の盾となるのと同義だった。争いが減れば人も死なずにすむ。  バビロンの言葉が真実かはわからない。怪物の罠かもしれない。それでも、このままでは何も変わらない。スピカはバビロンに答えを告げた。
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