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「なります。アルタンティスの、異形のもの(カトゥルー)の姫に」  スピカは物心がついた時には、もう蔑まれる存在だった。いや疎まれながらも存在できるなら、まだマシだった。  今やスピカを知る者はない。家無し(ロスト)というタグだけが唯一の存在証明だった。いなくなって悲しむ者もなければ、気づかれることもない。スピカは自分の存在意義をいつも探していた。 「わかった。やり残していることがあるなら、まだ時間はあるぞ」 「こっちには、なんにもない。今すぐでも大丈夫」 「そうか。ではスピカ。そなたを姫としてアルタンティスの地へ」  バビロンを縁取っていた光が膨張し、バビロンの影をも掻き消した。スピカは最後の選択なんていらないと思いながら、躊躇うことなく光の中へと入って行った。  目を塞ぐような眩しさが突然消えた。すると眼下に広がるアルタンティスの大地が見えた。空を飛んでいるのかと思ったが、自分自身を見ることはできなかった。  東の大地に光のラインが引かれると、空が星のベールを脱いだように白み始めた。  朝が来る。街では馬の蹄の音、鎧の擦れる音、砲台を引く音が集まり始め。街の人々も何事かと集まり始めていた。すると突然、地鳴りと共に各所から土煙が上がった。何事かと人々が固唾をのみ街が静寂に包まれると、街と樹林を分かつ大地が地響きをあげ隆起し始めた。
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