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馬がいななき人々が悲鳴をあげた。兵隊すらも成り行きを見守るしかなかった。スピカも目を見張り、その様子を見ていた。みるみると岩山が表れ、街と樹林を隔ててゆく。地響きが鳴りやむと、アルタンティスは岩山に囲まれていた。大戦を仕掛ける間もなかった兵隊たちも、騒動に起きた人々も、皆が唖然と岩山を見上げる中、さらに変化が起きた。
アルタンティスの中ほどに、黒曜石の城が現れた。城主が住まう天守は岩山よりも高くそびえ。朝日を受けた姿は美しさと妖しさを放ち、すべての人間の目に威厳を示すとともに畏怖の念を抱かせた。
しばらくは大人しく過ごしていた人間たちも、これ以上の異変がないとわかると、アルタンティスの大地を奪取すべく岩山を掘削しはじめた。強度をはかりながら作られた数々のトンネルは、多くの行き止まりと分かれ道で入り組み、岩窟迷宮と呼ばれるようになった。
岩窟迷宮を造り上げた執念には目を見張るものがあったが、所詮小さなトンネルから攻め入るのには限度があった。兵隊が何人連なっても、戻ってくる者は一人としていなかった。
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