最後のデート

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「つ、疲れた……」  ベンチの背もたれにぐったりと倒れかかる。  いや、なんでこんなに声かけられるの?  たかだかカチューシャ。そんな目立つ? 「ほら、絵麻」  声をかけられて大雅の方を見れば、手にはソフトクリームのカップが二つ。 「あーっ!これ、クリスマス限定のやつ」  限定デザインカップに、トッピングでジンジャーマンとかスターが乗せられていて、かわいいっ。  見た目のかわいらしさと限定の魅力で、一気に疲れが吹き飛んだ。 「なんか疲れてるし、人に話しかけられっぱなしだし、冷たいものでもいいかなって」  大雅のいう通り、慣れない環境下に晒された疲労感と緊張感で、真冬だというのに汗ばむくらいだ。 「どっちがいい?やっぱり抹茶?それともバニラ?」 「大雅は?」 「俺はどっちでもいいよ。絵麻が好きな方選んで」  いつも繰り返される会話。  優先してくれるその優しさが、好きだった。  でも。 「大雅が選んで。大雅がちゃんと食べたい方。最後、だからこそ。今日は大雅の意見を大事にしたい」
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