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一度零れ落ち始めた涙は止まらない。
子供みたいにヒックヒックとしゃくりあげてしまう。
「絵麻」
大雅の優しい声が響く。
声に引き寄せられるように顔を上げると、大雅が笑顔でソフトクリームのスプーンを持っていた。
「はい」
少し強引に運ばれてきたスプーンを、私は促されるままそっと口に含む。
ヒヤッとした感触の後、バニラの甘みが広がった。
「美味しい?」
頷きながら、ソフトクリームの冷たさで頭が冷えたのか。今、無意識に『あーん』されたんだという事に、気づいた。途端に冷たさがかき消されるくらいの熱を帯びる。
付き合って三年といえど、今まで人前でイチャイチャした事はない。それとこれは、別なのだ。
大雅も特にそうした事を求めなかったから、私達は人前ではせいぜい手を繋ぐくらいだ。
……だから、大雅の思いがけない行動に、急速度で胸が高鳴る。
「これが今、俺がしたい事だよ」
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