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花火が終わったあとも、私たち四人は砂浜にいた。夢から覚めたように帰っていく人々の群れ。ぼんやりと夜空を見つめながら、私はケイティの好きな人が誰なのか気になって仕方なかった。だけど、それが私じゃない時のショックを考えたら聞くのが怖かった。私はいつもこうだ。自分に自信がなくて、先のことを考えて、気持ちに蓋をして言いたいことが言えず、聞きたいことが聞けずに後から後悔する。今夜もきっと、彼女の好きな人が誰か気になって眠れないに違いない。
「レンカ、さっき私を助けてくれたのよ。すごくかっこよかった!」
頬を赤らめながら、興奮気味に彼女は他の二人に先ほどのジュースぶっかけ事件の顛末を話している。
「レンカがそんなことするなんて、よっぽど頭にきたんだな」
トウマが言う。
「うん、レンカが怒ったとこなんて一度も見たことないもん」
ミコトも続く。
「ある意味見てみたかったな、その場面」
「確かに」
寄せては返す波の音が、砂浜に心地よく響いている。
「子どもの頃、三人でよくここに遊びにきたよな」
トウマの言葉に、私とミコトはしみじみと頷く。
「そうそう。トウマと私がウミウシを投げ合って遊んでるのを、レンカが見てたっけ」
「そんなこともあったね...」
あのウミウシキャッチボールは色んな意味でトラウマだ。トウマが投げたウミウシが間違って私の顔に直撃し、砂の上に落ちたウミウシから紫色の液体が出て大声で叫んだことは忘れられない。
「そろそろ帰ろっか」
ミコトの一声で、私たちは誰からともなく立ち上がった。
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