1.いつもの一日

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 僕の父さんは銀行員だ。いつも遅くまで残業で、一緒に夜ご飯を食べた記憶なんて数えるほどしかない。休日出勤も多くて授業参観や運動会に来てくれたことなんて一度もなかった。正直言って寂しいと思うこともあったけど、そんな父を僕は尊敬している。やっぱり男は仕事ができなくちゃ。中学生になって余計そう思うようになった。  それに比べ母は最低だ。働きもせず家にいるだけの癖に文句ばかり言ってくる。洗濯物をちゃんと洗濯機に入れろだの食器を下げろだの。父さんが「働いてもないお前に何がわかる」「誰のおかげで飯が食えると思ってるんだ」とよく怒鳴っているがその気持ちがよくわかる。やっぱり女はダメだ。最近は父さんを見習ってあんな女の言うことなんて無視してやってる。やっぱり男は男同士。あんな女どっか行ってしまえばいいのに。今朝だって父さんが早く出かけるって言ってたのに寝坊したみたいだし。 「はい、お弁当」  どうせ昨日の残り物を詰めただけの弁当。僕は何も言わずに受け取り鞄に放り込んだ。 「いってらっしゃい」  うるさいな、と思いつつ当然無視して家を出る。ああ、いつもと変わらない一日の始まりだ。
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