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僕のことを『親友』と言ってくれた女の子がいた。
その子とは物心ついた時からいつも一緒だった。おままごとをして遊んだり、並んでお昼寝したり、お母さんに怒られた時に慰めてあげたりもした。
一緒に幼稚園に行った時、彼女をいじめっ子から守ったことだってある。あの時は大怪我をしてしまって、彼女は僕に抱き着いたまま何時間も泣いていた。
僕は、そんな彼女が大好きだった。
彼女も僕のことが好きだったはずだ。
そんな僕らが離れ離れになってしまったのは、彼女が小学校に上がって少し経った頃だった。
両親の仕事の都合で引っ越すことになったのだ。
それ自体は仕方がないことだと思うし、特に問題もないと考えていた。だって、彼女がどこに引っ越そうとも、僕も一緒に連れて行ってくれると期待していたんだ。
なのに、僕は置いて行かれた。
というより、忘れられた。
誰もいなくなった部屋の押し入れの中――そこにポツンと置かれた古いおもちゃ箱で僕は眠っている。
本当なら彼女を追いかけたいところだけれど、クマのぬいぐるみの僕は自分で動くことができないんだ。
でも、大丈夫。
僕と彼女は『親友』だから。
彼女は僕を抱き締めないと夜に眠れないんだ。だから、きっとすぐに気づいて迎えに来てくれるはずさ。
ほら、誰か来たみたいだ。
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