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「いきなりずるいですよ、白夜さんは」
「えっ、何で?」
「次はこうやって挨拶しよう、こんな話をしてみようとか、ほっんとたくさん考えて来たのに……全部吹き飛ばしてくれちゃうんですから」
困りげな微笑と共に渡されたボチャクロウ。白夜が抱きあげれば、得意気に羽根を数回広げて丸くなる。撫でられれば、そうされるのが当たり前と言わんばかりの態度で顎を上げ『ココッ、ココ!』と鳴き。
そんなボチャクロウに落とされた、彼女の優しい微笑。さっきまでの憂鬱が根刮ぎ飛ばされて、堪らなくなる。
「わっ」
だからと彼は、ボチャクロウの彼女に対する催促を手のひらひとつで塞いで、その頬へと口付けた。
『ゴッケ! コケェッ!!』
ボチャクロウの怒声めいた鳴き声が純真に向く。けれど、彼は全くと言っていい程聞いてない。正確には、耳にすら入っていないのだ。
耳まで真っ赤にして、今にも蒸気機関車の如く煙を吹き上げそうな白夜と、それを見、逆上せるかの如く、茹でダコ状態の純真と。
『ココッケェ〜……』
ボチャクロウがすん、としながら声を潜めた。呆れたのだろうか? 純真を睨むように見つめる姿は、まるで人間のよう。
「あっ、あーっと……えへへ。白夜さんが可愛くて、つい……」
「う、うんっ……嬉しい……」
笑うのすら申し訳ない。そんな風に眉を下げて笑う彼女に、感傷を植え付けられた末、潜む闇の深さを感じてしまう。しかし、そうだからと言って、胸に抱く愛慕の情に傷が入る訳ではないのだ。
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