Teeming Rain【相合傘が示す想い】

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「濡れちゃうって言ったのに」 「ひゃわっ」  力強く引き戻されて、崩したバランス。白夜は呆気なく、傘の中へと入れられてしまった。  何気なく見遣れば、視線の先で柔和に微笑する純真がいる。彼女はそれを直視出来ずに、頬を赤らめながら顔を沈ませた。  そんな姿を見せられてしまっては、妙な悪戯心が膨らんでしまうってもので。彼は頬を綻ばせながら、白夜の顔を覗き込む。 「相合傘っていいですよね」 「えっ、な、何で……?」 「二人でひとつの一体感と言いますか……すごい自然にくっつけますし。歩幅を合わせて歩くから、相手を置いてく不安もなければ、逆も然り。置いていかれる不安もないじゃないですか」  そうやって俺達も明日へと歩いていけたらいいですね。  鋭い目が目尻を下げて、口元に無邪気を飾って、彼女を見つめる。白夜はその顔に唇を噛み締めて、眉間を歪ませるだけの返事を返した。 (もし、本当にそうなら……私は沈む太陽でいい)  そうしてずっと、雨降りだったらいいのに。  そんな台詞、吐いても虚しく宙を舞うだけだと彼女は勝手に結論づけて、場所を案内する言葉を急ぐ。足を早める。  純真はその些細な変化に気付きながらも、後追う言葉を見つけられずに。彼女に歩幅を合わせながら、黙ってついてくのだった。
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