Teeming Rain【Be with you……】

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「ーーッ、ダメです、もうマジでダメッ……」  しかし、数分足らずで彼は限界を感じたようだ。幸せそうな、はたまた困ったような。そんな溜息を溢しながら、彼女を抱き締める。  こんな密室で二人きり。このまま事に及んでいたら、理性が飛んでしまいそうで怖いと。  そこで過る、星司との話。嫌でも刻まれた真実。一度焼き付いてしまったら払拭するのは難しく、煮え切らない感情ばかりに思考を支配されていく。 「何がダメなの?」  そんな中、笑声混じりで抱き返してくると言う追撃。これは効いたと、鼓動ばかりがうるさく反応している。 (どうしたらいい? 俺は風雅じゃないっ……)  だから、台本も無ければ全てがアドリブだと。純真として、白夜の彼氏として。何をしてあげたら、何をしたらいいのか、全く見当もつかない。身体は理解していても、心は決してそれに従わせてはならない。理性に白星を飾り続けていないと、白夜を壊してしまうから。 「これ以上は、そのっ……優しさを見失っちゃいそうで、恐れ多くって……」  おどおどした声。純真は彼女をきつく抱き竦めて、自由を奪う事しか考えられずに。  器用な女経験があれば、もっと上手く流せたのかもしれない。一男として、我慢も出来なければ取り繕い方も知らずに情けない。  解っている。結局、自分は彼女に対して善人ぶりたいだけの臆病な男なのだと。情欲がまるで無い訳でもなければ、好きだからこそ、もっと肌を触れ合わせたい。あわよくば、そのまま求め合って、繋がっていきたい。  そんな自然な心理を劣情へと変えてしまう少女。正解と呼ばれる接し方なんてないような気がした。
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