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「ひとりでに優しさを見失うことなんてあるの?」
「はい?」
不意に離された身体。白夜は純真を不思議そうな眼差しで見つめながら、首を傾げた。
「優しさは感じさせるものじゃないよ。他人がいて、そこで初めて感じられるもの……
だからね、優しさって個人に備わってる備品みたいなもので、それを自分で見失うことは中々無いんじゃないかなぁ?」
結局、それも全部含めて……受け取り手次第なのかもね。
妙に大人びた発言。何かを察したのか、白夜は膝を抱えて、純真の肩に凭れかかる。
そうして黙る横顔は至極あどけないのに、心はやけに達観している節がある。その不一致且つ不揃いな性格が語るのは、やはり彼女の情緒不安定具合だ。
「ばる君の優しさを私が見失うことはないよ。もしばる君が見失ったと感じても、一緒に探してあげる」
だから……、もっとずっと、傍にいて欲しい。
顔も合わすこともないまま、握られた手。それに高鳴った鼓動と、ごっそりと奪われた恋心。やはり白夜は純粋なのだと、その仕草や言葉に教えられる。
すると、安堵の裏で生じる危機感や邪推。この純粋無垢の塊を、あの幻想が蝕み、腐らせていくのだ。
そう考えると、抑えきれない程に膨らむ嫌悪感。はやる気持ちを殺すのも難しくなるばかりだ。
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