Teeming Rain【Be with you……】

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「俺も……」  宙に浮く程の柔らかい低声。白夜はそっと包み込むように胸へと仕舞われ、その目を真ん丸にした。 「望めるのなら、ずっと白夜さんの傍にいたいです。あなたが大人になっても、こうした関係でいたいっ……」  “嬉しい”と言うより“切ない”。そんな感情が白夜に色濃く刻まれた。それはきっと、紡がれた言葉がではなく、ような台詞だからだ。  そしてーーそんなもしも話が、自分の未来には存在しない。叶えたくても、叶えられないから。 (それなのに、何でかなぁ……)  『生きたい』と願ってしまうのは。  その意思に感応したのか、脳裏に過った王理の姿。罪悪感ばかりが生じる。そこに縛られてる以上は、誰も巻き込んではいけない。  そうだ。これは刹那の恋だ。螢火祭が、夏が終われば跡形もなく消える恋。キラキラとした魔法でしかない。 (ダメなのに。始めちゃえば、終わりが来る……もうこれ以上は、甘えちゃダメッ……!)  そう思い、離そうとした身体。純真は強く抱き寄せる事で、咄嗟に砕いた。 「何で泣いてるんですか?」 「ッ……ふ、……ひぐッ……」   慰撫(いぶ)するように優しくさすられる背中。その仕草が白夜には針を刺されるように痛くて、内罰的思考を加速させられるから。  唇を噛み締めて、言葉を堪える。喉奥まで込み上げている想いを口にしてしまっては、終わりが来ると。 「ごめん、なさい……ごめんなさいっ……」 「あれ? 変だなぁ〜……白夜さんに泣いて謝られるような事はされた覚えがないですね」  純真はおどけたように笑って、彼女に頬擦りを落とす。そうした顔はとても穏やかで、幸せを隠さなかった。  胸の中、咽び泣く姿は子供みたいにいじらしくて愛らしい。これが強がりなのも、薄々は理解出来るから。こんなにも守ってあげたくなるのだと。
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