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Teeming Rain【過去が降る】
傘で雨を凌いだ所で、汚れてないのは外面だけだ。
中身は常、土砂降りで泥だらけ。それが自分だと星司は神社から遠く離れた遊歩道で、ふと立ち止まる。
(マジで何してるんだよ、俺は……)
黒く濁った空を見上げたまま、茫然と立ち尽くす。人気も疎らな道。行き交う人々に植え付けられる憂鬱。
(やっぱり表なんかに出てくるんじゃなかった)
煮え切らないわだかまり。そこから生じる気鬱を舌打ちひとつで片付けて、彼は早足で宿へと向かう。
水溜まりも気にせずに歩くものだから、びしょびしょになったスニーカー。泥だらけになったそれが視界に入った瞬間、彼は自嘲を溢した。
(泥沼に浸かった人間が今更、泥を乾かす勇気なんて振り絞れる訳ねぇんだよな)
穢れた人間は結局、穢れたまま。普通に生きることを望んじゃ駄目なのか?
一度、二度の過ちをいつまでも引き摺って、罪滅ぼしが済むまで笑ったり泣いたり、のうのうと生きてちゃ駄目だって?
そう思わされるのが嫌で、今の今まで表社会から遠ざかり、身を潜めるように生活してきた。
転落に転落を重ねたような人生。耐え切れずに、逃げ出しては孤独を保つことで調整していた安堵。
(愚かだよ。俺なんて野郎は……)
止まらない自嘲と自責。過去に植え付けられたトラウマが彼を嘲り、煽り立てる。
だから逃げたかった。ただただ、逃げたかった。闇蛍屋からも、セナからも。今更、そんな愚痴を純真に溢せる訳もない。
(やっぱり奴に話して、この件は降りよう……)
ーー俺の代わりはどこにでもいる。
そう考えた瞬間、『負け犬』と囁く自我と、開放感に満ち溢れた自我が彼の中で葛藤していた。
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