Teeming Rain【雨過天晴の兆し】

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 外へと出れば、地面や傘を容赦なく叩く雨雫。星司は楽しそうにボチャクロウへと話しかけながら歩く純真に並ばず、その一歩後ろをキープして歩いていた。  後ろに流れる景色が鼓動を急がせる。純真はセナに手を出さなかった。そればかりか、お節介よろしく自分に対しての話を上手く引き出して来たと言うのに。   (俺は一体、何してるんだよ……)  言える訳がない。責任は持たなくていいと迫られ、流されるままに行為をしてしまいました。などと、口裂け妖怪になったとしても無理だ。  熱が完全消失してしまえば、後に残るのは純真やヒメ、そしてセナへの罪悪感。それは自責となり、最終的には後悔となって、収まりがつかない。  別にあっちは仕事で、こっちも任務だなんて誤魔化してみても、結局相手は全員、感情がある人間なのだ。道理から外れた行動をして、傷つかない訳が無い。 (一時の迷いでした、なんてのも所詮は逃げ口上。詭弁に過ぎない……)    誰も悪くない。登場人物全員が仕事を全うした中、自分だけが上手く立ち回れなかった。  闇蛍屋の少女達が子供と言うには微妙な年頃だと、目の前で能天気に歩く男に自ら諭したと言うのに。  実際、仕事と割り切れるような年でもない。心の片隅でそう感じていたが、今日セナの話を聞いて尚それを痛感させられた。 (きっと、アイツもそう振る舞うのが上手だったってだけで……裏では違うんだろうな)    冷静になればなる程、昨日のヒメに対しての行いに責任を感じてしまう。彼女の言葉通りに無責任をインプットしてしまうと、自分は闇蛍屋の連中と大差がなくなってしまう。  、価値のない安い人間にはなりたくない。廃れていた筈の心が崖っぷちで叫んでいる。もう落ちぶれたくはないと。 「なぁ、バル」 「神社まで、もうすぐです」 「はい?」 「それまでは何も言わないで下さい。どうか、急がないように……俺は大丈夫ですから」  重苦しさに淀んだ空気。そこから生じた陰鬱。  雨を飾った純真の微笑は、曇ったように揺れている気がした。  
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