Teeming Rain【相合傘が示す想い】

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Teeming Rain【相合傘が示す想い】

 灰黒に濁り、泣いているような空。やはり、純真は来ないのだろうか? 空を虚ろに眺める白夜の横顔は、涙に濡らされたように雨雫が滴っていた。 「これはこれは……やっぱり、白夜さんでしたか」 「へっ……」  純真の声じゃない。けれど、聞き馴染みのある声。白夜を濡らしていた屋根から滴る水がゆっくりと止む。  彼女が再び空を仰げば、そこには傘をさして、狐のように細く鋭い目を垂らして笑う男の姿があった。 「神主さんだ」 「ふふ。ちょこっとだけ久しぶりですね」  神主と呼ばれた男は紫袴の白装束をシワひとつなく着こなしていた。けれどオールバックの銀白髪はどこか(いかめ)しく、愛想と格好を省いてしまうと、とても聖職者とは思えない風貌をしている。 「こんな日じゃ子供達も来ないでしょう? 風邪ひきますよ」 「待ってるのは子供達じゃないよ」 「そうなんですね。では、一体どなたを?」  男はしゃがみ込み、ハンカチで徐に白夜の顔や髪を拭い始める。彼女はそうされる事に慣れているのか、不審がる様子もなければ嫌がるような仕草もなく。ぼんやり、そうする男を見つめるだけだ。 「内緒」 「おや、それは残念です。新しいお友達なら、僕にも紹介して欲しかったのに」 「友達じゃないよ」 「じゃあーー「白夜さんッ!!」  男の声は、爽快な声と水溜まりを弾いた足音に掻き消されてしまい、ついでに白夜の視線も彼から外れた。 「ばる君っ……!」  普段は虚顔しか浮かべない彼女に宿った、自然且つ朗らかな笑み。その視線の先にいる、ストリート系ファッションの少しチャラついた青年。  男は質問せずとも、疑問を解消出来たらしい。 「恋煩いの最中でしたか……どうりで、雨が映えるわけだ」 「へ?」 「無神経でしたね。乙女の甘酸っぱい一時をお邪魔してすみません」  どうぞ、ごゆっくり。  男は白夜の頭を撫で、純真に軽い会釈をして本殿の方へと去って行く。  白夜が立ち上がっても、合わない視線。純真は神主の背をぼんやりと眺めてるだけで、言葉がない。  そんな彼を振り向かせたくて、彼女は彼の服の袖をぎゅっと掴んだ。 「ははっ……」  その仕草に純真は照れを潜めたように笑い、その手をぎゅっと握って白夜の方へと振り向く。
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