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私の顔をした家政婦は私を見てにっこりと笑った。
「こんにちは、今日はよろしくお願いしますぅ」
こんなにそっくりなのに、この家政婦は全く気にならないのかが気になった。
「今日はお誕生日なんですよね?お誕生日おめでとうございます」
今日最初にお祝いの言葉を言われたのが、初めて会った自分のそっくりさんだなんて…。
「あぁ、はぁ…」
私は家政婦から目をそらせた。
「誕生日なのに元気がありませんねぇ?体調でも悪いですか?」
家政婦は手を私のおでこに当てた。
「やめて!」
私はびっくりして家政婦の手を思い切り振り払った。
「わっ。ごめんなさい!でも、熱なさそうですね。じゃあ折角なので一緒に誕生日のご飯作りませんか?」
家政婦はラベンダー色の大きな帆布のトートバッグから細かい花柄のエプロンを取り出して頭からかけるとキュッと紐をお腹の前で結んだ。
「え?一緒にって、私の誕生日ですよね?」
この人は何を言ってるのだろう?自分の誕生日に自分で料理するなんて。誕生日は誰かに祝ってもらうものじゃない?
家政婦は私の苛立ちに全く気付いていない様だ。
「お誕生日だからですよ。聞いた事ありません?お誕生日って本来は『おめでとう』じゃなくて『ありがとう』って言うべきだって」
家政婦は笑顔で自分の顔の横で人差し指を立てた。
「は?ありがとう?何で私がありがとうを言わなきゃいけないの?」
「生まれた人は産んでくれた親に『産んでくれてありがとう』親は生まれて来てくれた子供に『産まれて来てくれてありがとう』の気持ちを伝えるんですよ。だから藍子ちゃんはお父さんとお母さんに『ありがとう』の気持ちを込めてお料理を作りましょ?」
そう言うと家政婦はシンク下の扉を開きボウルや鍋などを取り出し始めた。
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