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平野奈津
私は、そこそこ幸せ、なのかな。もしかしたらそこそこ不幸なのかもしれないけど。
私はずーっとそこそこの人生だ。そこそこの顔で生まれ、勉強もそこそこ、運動神経も同じく。
スイミングはずっと習わされていたけれど、何の結果も残さず小六で辞めた。
中学の部活は吹奏楽。人数が少ないから楽器はもらえたけど、(フルートだった)我ながらなんのセンスもない演奏だった。
高校はそこそこの公立高校。部活は入らず、ファーストフードでバイトしてた。学校でもバイト先でもみんなと仲良くやれてたし、それなりに楽しい高校生活を送れたと思う。
高三で同じクラスになった凪沙は、最初クラスで浮いていた。なんかお高くとまってる、とか言われてて。私は別に何とも思っていなかったので、席が隣になった時にいろいろ話してあげていた。そしたら、なんか懐かれてしまった。
どこへ行くにもついてくるし、私が他の子と話しているとやきもちを焼くし、面倒な『かまってちゃん』だ。けどまあ、害があるわけでもないし、卒業したら会うこともないだろうと放っておいた。
卒業式の日、なんかすごく長い手紙をもらった。そこには凪沙の生い立ちからこれまでがズラズラと書かれていて、自分がいかに不幸だったかを訴えていた。
『でも、奈津がいてくれた。奈津と過ごしたこの一年は私の青春の思い出だ。ずっと忘れない。ありがとう。親友、凪沙より』
読み終えてなんか頭がクラクラしたけれど、とりあえずLIMEでひと言返事はしておいた。
『こちらこそ、ありがとう』
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