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病室の窓からは、背の高い木の頭が見える。季節は冬へと移り変わり、たくさん生い茂っていた葉も、残り数枚だ。
「あの葉が落ちたら、私も死ぬのね…な〜んて、O・ヘンリーの小説じゃあるまいし」
私はため息をつき、窓に背を向けてベッドに潜り込んだ。
「あの葉より、私の方が先だったりして…」
入院生活が始まってもうすぐ半年。治る見込みの無い病気。日に日に病状が悪化しているのは、自分でも分かっていた。でも、死ぬのは怖くない。両親はすでに他界しているし、兄弟姉妹もいない。恋人も友達さえいない。この世に思い残す事なんてなかった。
ただ1つ、気になる事はあった。忘れものの事だ。場所は分かっている。でも、気軽に取りになんて行けない。何故なら、それは夢の中だからだ。
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