詐欺電話?

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詐欺電話?

「もしもし?」 『もしもし?』 「だれ?」 『もしもし? もしもし?』 「もしもし? どちら様ですか?」 『もしもし? 聞こえていますか?』 「聞こえています。どちら様ですか?」 『おばあちゃんですよ』 「え? おばあちゃん? 番号変わったの?」 『そうなのよ。ちょっと携帯電話の調子が悪くてね』 「え? でも、声も違う気がする……」 『ちょっと風邪気味でねえ』 「そうなの? 大丈夫?」 『それは大丈夫なのだけど、ちょっと困ったことがあってね』 「え? 何があったの?」 『実はねえ、みんなには内緒にしておいてほしいのだけど……』 「うん。どうしたの?」 『お隣の奥さんとちょっと……トラブルになってしまってね』 「トラブルって?」 『ちょっとねぇ……柿をね……』 「かき?」 『柿よ』 「柿? 柿がどうしたの?」 『お隣さんの柿の木に実がいっぱいなっていてね、つい……』 「え、採っちゃったってこと?」 『ほんの少しなのよ』 「いやいやいや、少しとかって問題じゃないでしょ?」 『そうなんだけどねぇ』 「それで? お隣さんは何て言っているの?」 『怒っていてね、どうしようかと思ってね』 「謝ったんでしょ?」 『そうなんだけどねぇ。  何か、お詫びの品でも持って行った方がいいかねぇ?』 「うーん……そうかもね」 『何か見繕って買ってきてくれないかい?  最近、買い物に行くにも大変でね』 「えぇー……」 『悪いねぇ』 「わかったよ。なんか買って土曜日に持ってくわ」 『ありがとう。助かるよ』 「それじゃあね」 『ありがとう。待っているよ』 【土曜日】 ピンポーン 「おばあちゃーーん! 来たよ!」 『あらあらあら! 突然なあに?』 「え? 土曜日に行くって言ったじゃん」 『えぇ?』 「はい、これ。頼まれていたやつ」 『なにこの高級フルーツの詰め合わせ!? どうしたの?』 「なにって……柿のお詫びでしょ?」 『柿のお詫び?』 「え?」 『え?』 === 〈社長さん、社長さん。ご報告です〉 《はい?》 〈ご報告です! 補聴器のスイッチを入れてくださいな!〉 《はい、はい。すみませんね》 〈ご報告です。昨日、スーパーで3丁目の佐藤さんに会ったのですけどね、土曜日にお孫さんが8か月ぶりにいらっしゃったそうです。高級フルーツの詰め合わせを持って〉 《そうですか。それは良かったです。それでは、3丁目の5班は佐藤さん宅をもって完了ですね》 〈はい、この班のお宅で、1年間親族の来訪者がいない方はいなくなりました〉 《それは良かったです。では、次は2丁目の1班の高橋さん宅お願いしますね》 〈かしこまりました。次はどんなストーリーにしましょうかねぇ。おほほほほ〉 《そこはお任せしますよ。ボケ防止に頭を存分に使ってくださいな》 おしまい
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