1. 突然の死

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1. 突然の死

塚本澄生が自宅で猟銃自殺を遂げたのは、1981年1月3日の早朝のことだった。 まだ36才の人気俳優の、突然の死を告げるテロップが、世間を驚かせた。 独身の塚本は、その日ひとりで自宅のマンションに居た。 たまたま訪れた年始客が、鍵のかかっていない玄関を不審に思って上がり込み、変わり果てた彼の姿を発見したのだった。 遺体は一度警察の手によって検視に回されたあと、自宅へと帰ってきていた。所属事務所の社員が慌ただしく通夜の準備で出入りする中、すでに集まったメディア関係者の姿があった。 「田代さん、ちょっと話聞かせて下さいよ」 「ああ──木島君、だったな」 田代浩輔は、マンションの入口まで来て、木島という若い雑誌記者に捕まった。まだ記者としては駆け出しの、童顔があどけない位の男だ。 田代の方はもう15年も芸能誌の仕事をしている。今ではフリーの芸能ジャーナリストとして、業界では名を知られた存在だ。 亡くなった塚本とは親しい友人だった。そんな田代から何か聞き出そうと、木島が声を掛けたのだった。二人はエレベーター前のホールの隅で立ち話を始めた。 セキュリティが厳しくなかったその当時、外部の人間が建物内に入ることはそう大変ではなかった。   「猟銃なんかどこにあったんですか」 「応接間に飾りで置いてあったんだ。まさか実際に使うとはな。足で引き金引いたらしいが……」
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