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能力
俺は出会ってその日に腐男子だとバレた。篠原にはスゲー怖い目で見られた。
なんで俺だけなんだよっ!と思いながら、ヤイヤイしていると蛍が、にしても……能力?なのかな。アレのこといつ話せばいいの?って言い出した。
「能力?なにそれ?」
「えっ?」
篠原が聞くと、無意識だったのか目を丸くした。口に出てた?それってやばいよね?そんな感じの顔。
「あー……能力かはわかんないけどそれっぽいのがあるんだよ」
隠しきれないと思ったのか、困ったように眉を下げた。
「何言ってんだお前、夢でも見てんのか?」
言い出したことが訳わからなくて、クスクス笑うと、篠原をが殺すぞと言わんばかりにギロリと睨んだ。
「は?蛍の言うこと信じられないの?じゃあ話に入ってこないで。……で?能力って?」
睨んでいた顔をパッと笑顔に変えて蛍に向けた。
番犬か。分かってたけど俺と蛍への態度差が凄い。『……で?能力って?』って犬みたいに目キラキラさせて尻尾振ってた。
俺にもそう言う顔してくれよ。そんな風に思いながら、ヤレヤレとため息をついた。すると、言いにくそうに頬を赤らめてモジモジした。
「あの……信じるかわかんないけど」
緊張しているのか、少し間が空いた。
「俺、夢見るんだよね」
「ん?どんな?」
「え……言わなきゃダメ?」
目を丸くして、篠原を見た。
「どうしても嫌だったらいいんだけど気なるかな」
その夢を思い出したのか、少し顔が熱くなった。赤い顔を見られたくなかったのか、恥ずかしいのか俯いた。
「えっと……圭ちゃんの夢」
「僕?」
少し驚いたように目を丸くする。
「そう、圭ちゃんの……その……エッチな夢」
恐る恐る俺たちを見た。俺たちは呆然とした。暫くしてから篠原の顔が真っ赤になった。
「え、あっ……僕?!」
「そう。それはいいんだけど……いや、良くはないか。……それでその夢を見て現実になるんだけどなんなんだろ。子どもいる夢も見たし、押し倒されてる夢も見た。あとは……」
蛍が指を折って数えていると、更に顔を赤くして、慌てた様に『待って待って!』と叫んだ。
「……?なに?」
蛍は不思議そうにキョトンとした。
「今ものすごーく大事なこと聞こえた気がするんだけど?」
深刻な顔で額に手をついた。
「え、どこ?」
「子どもって言った?」
「うん」
「……あ!」
「ん?」
「だから子供の話した時やけに詳しかったんだ!」
「そう。圭ちゃんと再開する日にみた夢」
蛍がうんうんと頷いていると、キレ気味に言った。
「もっと早く言ってよ!」
「なんで?」
「僕付き合えないのかなーって心の中どこかで不安だったんだから!」
「あ……それはごめん。でもこれが絶対現実になるとは限らないからさ」
言い合う2人を俺はボーっと見つめた。
「つーか、なにこれ?俺イチャついてんの見せつけられてんの?うわー、サイコー!枯れた腐心が潤うわ〜」
蛍は変なものを見る目で俺を見つめた。引くな引くな。
「そのままエロいことしてくんねーかなー」
雰囲気もへったくれもないけど。
『うぁあ""〜っ!』と悶えていると、篠原がピクリと反応した。
「あ?蛍で想像すんな」
「圭ちゃん……怖いよ?」
「あ、ごめんね?」
俺を殺す勢いで睨んでいたのに、蛍に向けるのは犬の様な純粋な笑顔。
「……お前やべぇな」
篠原の口の悪さがどんどん悪化していく。
「僕だって淫らな蛍を何度想像したことか!」
「やめて?!」
何を勝手に想像してくれてるんだ!と恥ずかしそうにする。
「まぁ蛍顔かわいいし頑張ったら抜ける」
そう言うと、
「頑張らなくていいよ。てかやめて?」
って困った様な返事が来た。
「初音、次想像したらブッ殺すぞ」
篠原はこれが通常運転なのか。怖すぎるだろ。ゾッとした。
「あ"ーもう!してねぇって!」
「ならいいよ」
降参と両手を上げると、殺しそうな目で胸ぐらを掴んだ篠原は爽やか笑顔に戻して、手をパッとはなした。
「受けにだけ甘い攻めもサイコーだよな」
そんな風に思いながら、少し乱れた服を整えた。
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