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幸せって
その後暫くしてからお母さんが立ち上がって、料理を作り始めた。
みんな親ってこんな感じなのかな…。いつも家にいて、料理を作って、時々喧嘩もするけど、大好きだって伝わる。そうだったらすごく羨ましい。
楽しそうに料理をするお母さんをぼーっと見つめる。
「…くん、初音くん?」
隣から呼びかける声がしてハッとした。
「っあ、はい!」
「ボーっとしてたけど大丈夫?」
「あ、はい。全然!」
へへ、と笑って見せると、『ならいいけど』って微苦笑した。
「遥輝さんは普段何してるんですか?」
「普段は大学行ってバイトしてる」
「へー、バイト楽しいですか?」
「んー、まぁまぁかな」
「俺今度行きます!」
「来てくれんの?」
「はい!…あ、遠いと無理かも」
そう言うと、プッと吹き出して、俺の頭を撫でた。
「悲しそうな顔をすんなよ。」
「?してました?」
「うん、すげぇ顔に出てた」
「へへ、遥輝さん優しくて好きっス」
「可愛いやつだな。弟みたいに見えてきた」
「遥輝さんが兄貴なら嬉しいっス!」
「蛍とは違う可愛さがある」
「絶対蛍の方が可愛いです!」
これだけは絶対の自信がある。兄弟だし、蛍顔も言動も全部可愛いし。
鼻高々と話していると、俺も可愛いって言われた。
「…あ、そう言えば初音くんじゃなくて真白でもいい?」
「はい!」
その方が距離近くなったみたいで嬉しい。親近感が湧く。
「真白は普段何してんの?」
「普段は……遊ぶ人居ないし1人っスね」
少し俯くと、俺の顔を覗き込んだ。
「あー…っと…じゃあ今度俺と出かけようか」
「え。いいんっスか?」
「いいよ、俺真白と遊びたいし」
気を使ってくれたんだろうな。同情してんのかな。そんな風に思ったけれど凄く嬉しかった。
俺の細かい所に気がつくのは幼馴染の雅人だけだったから。
悠哉は同じ病院で生まれて、同じ保育園と小•中•高に通ってる。ずっと一緒。兄弟も同然だから。
「男同士でデート。真白そういうの好きだろ?」
ニッと楽しそうに笑うのを見て、プッと吹き出した。
「俺ゲイじゃないっスよ」
「ええ?でも好きだろ?」
「はい。好きっス」
クスクス笑いながら頷くと、『んじゃ、決まりだな』って言って楽しそうに検索アプリを開いた。
スマホを見せてくれて、どこ行く?って。
すげー不思議。雅人と居る時とは違う楽しさ。出会って一時間程度なのに、もっと一緒に居たいって。
……もしかしてこれって…
親友が2人になるとか?!
ごめん蛍。ライバルできたな。
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