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ドSな遥輝さん
あの後暫く行く場所決めるので盛り上がっていると、上から甘い声が聞こえてきた。俺は思わずニヤニヤした。上でも盛り上がってんな。と思いながら決めていると、遥輝さんは家から大学まで遠いけど、学校からなら近いから来いって言われた。大学かぁ…別に中に入る訳じゃないけど緊張する。そんな風に思っていると、料理が完成した。遥輝さんはニヤニヤしながら立ち上がった。
「邪魔したくねーけど呼ばねぇとなぁ?」
人の嫌がる顔が好きとか言ってたしドSか?俺は邪魔したくない。蛍はどうかわからないけど篠原は幸せそうだし、アイツらそのうち付き合い出しそうだし…。べ、べ、別に蛍の可愛い声聞きたいとかじゃないからな?!ブンブン首を横に振って言い訳していると、遥輝さんが階段の前で叫んだ。
「ほたるー!!」
叫ぶけれど、しんと静まり返った。
「返事ねーな」
困ったように頭を掻いてもう一度叫んだ。
「メシ、出来たぞー!!」
またしんとする。
「返事しろよな」
めんどくさそうに顔を顰めた。もう一度言おうと口を開いた時、上から怒鳴り声が聞こえた。
「毎回毎回邪魔すんじゃねぇよ!!」
全員の肩がビクリ跳ねた。
「くくっ、俺に言われてもな」
「意地悪っスね」
俺が苦笑すると、ニヤッと怪しい笑みを浮かべて俺の隣に座って、肩を組んだ。
「なんだ、こんな俺は嫌いか?」
その言葉に間髪入れずに首を横に振った。
「可愛いヤツだな」
髪をぐしゃぐしゃにされて、嬉しい気もしながら髪を整えた。
暫くすると蛍は篠原に手を引かれて戻ってきた。心なしか頬が赤い気がする。
遥輝さんがニヤニヤしながら2人を見ると篠原はギロリと睨んだ。
「……なに?」
「いや?ナニしてたのかな〜って」
ホント逆撫でするの好きだよな。
「Shut up《黙れクズ》」
「おいおい、ボソッと文句言うのは狡いぞ?しかもわざと聞こえるようにしたろ?」
遥輝さんはヤレヤレと言いたげにため息をついた。
「なんのことですか?」
ニコッと爽やかに微笑む篠原。王子様みたい。でもこの笑顔嘘くさくて好きじゃない。蛍は篠原をじーっと見上げてから、クイッと腕を引いた。
「……圭ちゃんご飯食べよ」
「その前に服着ろよ?」
クスクスと楽しそうに笑う遥輝さん。蛍は何を思ったのかすこし不満そうに口を尖らせた。
篠原が服を着て、揃ったらみんなで手を合わせて食べた。家族みんなでご飯ってこんな感じなのかな…。
雰囲気はカオス状態。篠原が英語で何かブツブツ言って、遥輝さんは篠原に何か言い返している。それを見たお母さんは喧嘩するなと遥輝さんを叩いた。
こうやって家族で他愛もない話をして、しょうもないことで喧嘩をして笑い合う。
友達がいるから笑い合うこと、一緒にご飯を食べることはできたけど、俺の家ではできないことだったから至極幸せ。
「かぞく…ごはん…いいなぁ」
みんながボーッとしている間に蛍は篠原のお皿からウィンナーを取った。篠原は直ぐに気づいて、蛍はあざとくニコッと微笑んだら、デレッと頬を緩ませて『いいよ、それあげる』って言った。蛍は何を思ったのか、『圭ちゃん大好き』って言った。俺たちは呆れたようにため息をついた。
蛍は不思議そうに首を傾げてから、幸せそうにウィンナーを頬張った。
暫くしてから蛍の手が止まって、少し顔を顰めながら俺たちを見た。
「……さっきからなに?」
篠原は顔を逸らして、俺は蛍をまじまじと見た。遥輝さんはまた呆れたように額に手をついた。
「何か言ってよ」
蛍がムッと頬を膨らますと、篠原は顔を背けたまま、手だけ蛍に伸ばして頭を撫でた。
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