あくむをたべるばけもの

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とあるところに ばけものがいっぴきいました ひとみはくらいくらいよるのいろ からだはゆうひみたいなおれんじいろで けむくじゃらです あたまにはおきにいりのあおいぼうし においはあまいみかんみたいです よくわすれものをしてまわりのみんなにおこられます ばけものはよるになるといろんなひとの いえにいって あくむをたべます ばけものはあくむをたべればたべるほどつよくなれます からだがどんどんおおきくなっていきます 「いつかせかいじゅうのあくむをたべて せかいいちつよくなるんだ!」 ばけもののゆめはせかいせいふくです みんなはたくさんおうえんしてくれます ばけものはほんきです でもどこかいわかんをかんじています きょうもせっせとゆめをたべにいきます ひとりめはねがおがかわいいおんなのこ そのあくむはほっとけーきにつぶされるゆめでした おもくてくるしそうでした 「ほっとけーき おいしそうだな」 ばけものはおおきなくちをあけてあくむをすいこんでいきます そうじきみたいにぎゅーっと おんなのこはほっとけーきからかいほうされてえがおです ばたーのにおいがします ばけものはからだがすこしおおきくなりました 「つぎにいこう」 ばけものはうでどけいをみました ばけものたちのるーるで あさろくじになるまでにあくむからでないとえいえんにあくむのなかにいないといけないのです でることは ぜったいにできません ばけものはきをひきしめました ふたりめはおとなのひとです ゆめのなかでおとなのひとはしごとにおわれてしました おこられています 「どうしておとなはいそがしいんだろう」 ばけものはあくむをすいこんでいきます このあくむはしぶとくてなかなかくちにおさまりません すいこむのにたくさんじかんがかかりました おとなのひとはかぞくとおちゃをのんでたのしそうにはなしています かおもしあわせそうです うまくすいこめたようです ばけものはつぎにいきます つぎへつぎへ ……じゅうににんのあくむをすいこんで からだもいままででいちばんおおきくなりました ばけものはそこできづきました 「……あ!」 おかあさんからもらったたいせつなあおいぼうしがありません どうやらわすれものしてしまったようです ばけものはあわてます 「どうしようどうしよう……!!」 ばけものはじゅうににんのゆめのせかいをもどっていきます なくしたぼうしをさがすために ひたはしります うみがひろがるせかい ほっとけーきのせかい おかねもちになるせかい すきなほんだけのせかい おかあさんにほめられるせかい かぞくとおはなしするせかい あめとさいれんがきれいなせかい こんちゅういっぱいのせかい もみじがあかくそまったせかい すきなひととめろんぱんをたべるせかい すきなえいがをすきなだけみれるせかい じゅういちにんのゆめをみましたが ぼうしはありません さいごのじゅうににんめのゆめにはいります 「あれ?」 さっきすいこんだはずのあくむがふっかつしていました いちめんくろいろのやみ なにもない つめたくてこわいあくむです ぼうしはそのあくむにおちていました 「よかったあ!」 くらやみのちゅうしんでおとこのこがないています しゃがんでめそめそないています ばけものはぼうしをかぶりなおして くちをあけます 「もういちどすいこんでやる!」 さっきよりもちからがつよくなったすいこみをみせます ぶらっくほーるみたいにつよく 「すいこめない……!」 くらやみはくちのなかに入ろうとしません やがてばけものはつかれはててたおれてしまいました しょうねんがよろよろちかづいてきます かおにはたくさんのあざがありました 「ここからでたくないよ」 「どうしてでたくないの?ここはくらくてこわいよ」 「このゆめがさめたら またいじめられる」 しょうねんはまたなきだしてしまいました ばけものはきづきます これはあくむではなく しょうねんがのぞんだせかいなのだと 「でもここにいるとこどくになっちゃうよ」 「べつにいいよ どうせそとにでてもなにひとつよくならないんだから」 ばけものはあのてこのてをつかってしょうねんをせっとくしようとしましたが くびをよこにふるばかりです ばけものはどうしていいかわかりません ひととかいわなんてしたことがありません それでもひっしにせっとくします 「きっとだいじょうぶだよ おわらないよるなんてないんだよ」 しょうねんはなにもきこうとしません くらやみのつめたさがつよくなります ばけものはけむくじゃらなのでさむさにつよいですが しょうねんはにんげんなので こごえています ばけものはしょうねんをだいてあたためようとします しょうねんはひっしにていこうします 「やめてよ! ぼくはさむくなんかない!」 「でもふるえてるじゃないか むりなんてしちゃだめだよ 」 「むりなんてしてない!」 「あばれないで なにかおちつくはなしでもしようか ……そうだ ぼくのしょうらいのゆめはね……」 せかいをせいふくするんだ といいかけたところでばけものはきづきました ぼくはせかいせいふくなんてしたくない みんなをまもるひーろーになりたかったのだと いろんなばけものにはなしてばかにされてわすれていたゆめを ばけものはおもいだしました しょうねんのねつがおしえてくれました しょうねんのひとみがおしえてくれました ばけものはあおいぼうしを しょうねんにかぶせました 「これからこのくらやみをすいこんでみるよ だいじょうぶ かなえられないことなんて ぼくにはないんだ」 ひーろーみたいなことをいって ばけものはくちをあけます くらやみはやっぱりうごきません ばけものはあせをかきます でもにげるわけにはいきません かなしそうなしょうねんが みているのです あさろくじがせまってきます それでもばけものはひっしにすいこみます しょうねんがのぞんだせかいなのに しょうねんがないているのは おかしいじゃないか! たましいがさけんでいます ばけもののぜんしんがふるえます くらやみがすこしずつうごきだします しょうねんもふるえています 「しょうねん ゆめがさめてもだいじょうぶだよ だってわすれものたくさんするぼくでも いきているんだもん」 「……ほんとうに?」 「うん ほしょうするよ 」 しょうねんはなみだをとめて ばけものを見ます 「たすけてくれるの?」 ばけものにまよいはありません くらやみがすいこまれていきます ひーろーのちからは いだいです いちめんに まんかいのはながさきました
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