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「すごいな要……研究室で寝れるって…
……本当にすごい……」
俺の言葉に澤田さんは「俺もそう思うよ」と声を上げて笑った。
「ーーー昼ごはん奮発してたくさん食べたらさ…眠くなっちゃってーーー…
研究室誰も居ないから…いいかなって…」
要はバツが悪そうな顔をしてそう告げた。
もしかしたら要が先程から澤田さんから話を聞かれる事に乗り気じゃ無かったのは、コレがバレたく無かったからかもしれない。
「じゃ、葛西君は?」
俺は澤田さんの笑顔に、再び姿勢を整えた。
「はい」と返事をしてから答える。
「僕はいつも通り…和田先生の講義を受けてましたーーー
…講義が終わってからは別のーーー真田先生の講義があってーーー
その日はぶっ通しで講義が入っていました」
澤田さんは俺の言葉に、うんうん、と頷いた。
「ーーーーやっぱり誰も見てないよなぁ…
…黒ずくめの怪しい男が居たとか、いつもは見ない車があったとかーーーそんな事でいいんだけど……ないよね…?」
俺も要も顔を見合わせて頷く。
その日大学はーーー俺と要が知る限り普通の日常であった事は間違いない。
「凶器ってーーーなんだったんですかーーー?」
俺は出過ぎた質問かなと思ったが、澤田さんに尋ねた。
澤田さんはもう一度ブラックコーヒーを口に含んでから、手帳に絵を描いて説明してくれる。
「凶器はねーーーー
こういう細い棒…いや…針の様なものーーー
津田先生はこういう細い針の様なものでーーー後ろから心臓を突き刺された…。
君達がこう言ってイメージ湧くか分からないけど…必殺仕事人みたいな感じだね」
要は「怖ぇ…」と小声で呟いた。
時代劇とは縁の無さそうな要もどうやら、必殺仕事人は知っているらしい。
「ーーーえ…津田先生ってーーーー
ーーー大学で亡くなってたわけじゃ無いですよね…?」
今度は要が澤田さんに尋ねる。
「そうだね。
…津田先生はニュースで話があった通りーーー…大学から2キロ程離れた場所の、雑木林の中に遺棄されていたーーーー
それを朝ーーー犬の散歩をしていた男性が見つけーーー警察に通報した」
要は話の途中で、ゆっくりとホリデーフラペチーノを口に運んだ。
よく飲めるなと思いながらも、俺もチョコレートフラペチーノに口をつける。
「でも」
澤田さんはテーブルに広げたメモ帳をボールペンでタンと叩いた。
「殺されたのはこの河川敷じゃない」
俺と要は同時にカップをテーブルに置いた。
俺も口元にクリームがついてるかと心配になり、唇を2、3度舐める。
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