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「ーーーー気になってんの?」 俺はチョコレートフラペチーノのクリームをストローで崩し、ぐるぐると混ぜた。 「うんーーー昨日、湯川さんからLINEきてーーー 明後日から復帰するみたいだしーーーでも聞けないよなーーーー 『青木と付き合ってたんすか?』なんて」 聞いてどうするのかと、俺は考える。 要も俺の真似をして、ホリデーフラペチーノをぐるぐるとかき混ぜた。 「青木先生にはアリバイがあるじゃん。 お前と一緒に、研究室に居たってアリバイがーーー」 「それなんだけど」 要ははっきりと、被せる様に言った。 「ーーー俺は青木が来たのーーー …分かんないんだよーーーー」 「???ーーーどういう事?」 俺は要の言葉の真意がわからず眉間に皺を寄せてしまう。 「ーーー俺…課題やるぞ! って思って席に着いたんだけどーーー ……まぁ……昼メシ食いすぎて血糖値上がったせいなのか…眠くなって寝ちゃってーーーー 2、3時間は寝てたからーーー実際に青木が部屋にいるの確認したわけじゃなくてーーー 俺が目覚めた時には既にーーー 青木は部屋にいなかったからーーーー」 要は言いながら、心配そうと言うよりは不安そうな顔をした。 「ーーーもしさ、もしもーーー ……湯川さんが青木と不倫してて… 青木が津田先生を邪魔で…… …殺したんだとしたらどうするーーー? ーーーたまに聞く話じゃん… ……元彼と不倫ーーーーとかってーーー」 元彼と不倫というワードが、要の中でたまに聞く話である事にも驚きだが、俺は要が津田先生が亡くなったこの件に関して、ここまで色々考えているというのも意外だった。 「ーーー珍しいね…要がそこまで考えるの」 俺は失礼かなと思いながら、思ったままをそのまま口にする。 要は苦笑いを浮かべてから、少しだけ俯いた。 「俺面食いだからさーーー ーーー青木を疑ってもーーー ーーー湯川さんは疑いたくないわけーーーー だからこれーーー警察に言わなくても良いかなって… 俺が証言しなくてもーーー優秀な警察官なら、わかりそうな事だし」 少しだけイタズラっぽい微笑みを浮かべた要を見て、俺は気付かなければいい事に気づいてしまう。 もしかしたら要はーーー ーーー湯川さんの事が本当にーーーー 好きなんじゃないだろうかーーーー そう思って直ぐに、俺は自分も湯川さんに恋心を抱いているのではと自分を疑い始める。 俺がさっきから青木先生に感じる軽い嫉妬心の理由を、俺は説明できない。 …でも違う筈だーーーー 年齢が一回りも違う…ましてついこの間まで結婚していた女性をーーー…好きになる筈ない。 俺はそう考えて、無意識に頭を振った。 「葛西」 要に呼ばれ、俺は顔を上げた。 「ちょっとーーー付き合ってくれるーーー?」 俺はこの後、要が言った提案に驚きつつも、首を縦に振った。 理由は要と同じで、俺も湯川さんがこの事件に関わってないってーーーー いやーーー湯川さんだけじゃなく青木先生もーーー 津田先生が亡くなった事とは無関係だとーーー少しでも思いたかったからだった。
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