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「なんでーーー別れちゃったんですかーーー?」 俺は要が口を開くより先に、山本さんに尋ねる。 「なんでーーーって…… …私が美緒から聞いたのはーーー (れい)の事は好きだし研究熱心な所はすごく尊敬してるけれどーーー …連絡しても全然連絡返してくれないし、デートもしてくれないーーー…って悩んでたのは聞いててーーー」 「ーーー!!!((れい)…!!!)」 「ーーー(れい)……」 俺が心の声でとどめた驚きを、要は口に出してしまっている。 「ーーー(れい)って名前ね…君達が言う青木先生の…! …昔だから…!美緒がそう呼んでたのは……! でも私も…美緒の気持ちわかるなぁって… いくら好きでもさ……一方通行の付き合いじゃ嫌にもなるよ…… 優しくて……ダンディな津田先生をーーー美緒が好きになっちゃうのもわかるーーーー それにーーーーー……」 山本さんはそこまで言いかけて、口をつぐんだ。 言おうか、言わないかーーー何かを迷っている様な様子。 「ーーーそれに…どしたんですか…?」 俺が聞き返すと、山本さんは視線をやや俯きがちにして、声のトーンを俺ら以外誰が聞いてるわけでも無いのに一段落として言った。 「ーーーその頃さ……美緒の幼馴染だった先輩が亡くなって……それで色々……考えたりしたんじゃ無いかなーーー 人生について考えてーーーこのままでいいのかなとか考えた時にーーー… ーーー美緒としてはやっぱり…自分を大切にしてくれる津田先生と一緒にいたいって思ったんだと思うよ」 山本さんは昔を振り返る様に切れ長の目を細めた。 「幼馴染?」 要が聞き返すと、山本さんが頷く。 「うんーーー伊賀(いが)先輩…って言って… 父親が酷いDV男で…小さい頃から母子家庭だった事もあって…美緒と家族同然で仲良くしてる先輩だったの。 美緒と小学校から大学までずっと一緒で、苦労した分お母さん思いで優しいしーーーーめちゃくちゃ優秀で、人当たりも良くて… 私達は環境学部だったけどーーー 伊賀先輩は青木と同じ工学部でね… あんまり大学で会う事は少なかったけど、それでも美緒と会えば一緒にご飯食べたり、一緒に帰ったりしてたのよ」 湯川さんに幼馴染がいるなんて、初めて聞く話だった。 湯川さんは誰に対してもフレンドリーで、自分の話をしてくれるけど、幼馴染の話なんて話してくれた事は無かった。 「ーーーなんで…亡くなっちゃったんですか?」 山本さんは俺の質問に、今度は躊躇うことなくはっきりと答える。 「ーーーー階段から…落ちちゃったの…… ーーー確か…美緒と私が大学四年生だったから…伊賀先輩が大学院の2年…修士過程の時の事かな…… 工学部全体の研究発表会が近かった時期でーーーー 伊賀先輩この研究発表会にかなり力入れてたみたいで……こん詰めて疲れてたのか…寝不足だったのか… ーーー…工学部の棟にある外階段から足を踏み外してーーー ……それでーーーー亡くなったのーーー 打ちどころが…悪かったって聞いたよ……」
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