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「ーーーーーー…」 はっきりと答えた山本さんとは対照的に、俺と要は今、きっと同じ様な違和感を感じている。 青木先生と湯川さんの周りで亡くなったーーー津田先生とは別のもう1人の人物。 僕達が何度も通っている工学部の棟のーーーあの外階段から落ちて亡くなったーーー 俺と要にとってはだが、それは不自然だった。 だって俺も要も何度もあそこを通っているけど、あの外階段はそんなに足場の悪い階段でも無ければ、手すりの無い階段でもないしーーー滅多な事が無ければ冬場に凍ることも無い。 「ーーーえーー… ………本当に…事故なんですかソレ…」 要は思わず本音を漏らし、山本さんに睨まれる。 「事故よ…!…アンタもしかしてーーー 伊賀先輩が誰かに落とされたと思ってるのーーー? ーーー確かに警察も事件の可能性が高いって言って何度もあそこを調べてたけどーーー結局何も証拠が無くて事故ってことになったし… ーーーー伊賀先輩は誰かに恨まれる様な人じゃ……私は無かったと思うけどーーー」 山本さんが言葉を詰まらせてしまったのを見て、俺は要の肩をポンと叩いた。 これ以上その伊賀先輩の死についてーーー誰かを疑ったりしてもダメだーーー。 山本さんや湯川さんはその伊賀先輩がーーー事故で死んだと疑っては無い。 それを何も知らない、その死を今さっき聞いた俺らが勝手にどうこう憶測を考えるのもおかしい話だ。 要も俺が肩を叩いた意味が分かったのか、黙っていた。 「ーーーありがとうございました。 ーーー色々聞いてーーー…思い出したくない事まで色々思い出させてしまってすみません」 俺は山本さんに頭を下げた。 要も慌てて、釣られる様に頭を下げる。 山本さんは一歩だけ後退りをして、俺達が顔を上げると顔を横に振った。 「いいのーーー。 …津田先生の事ーーー気になるよね…! なんかあったらまた声かけて…! じゃあね…!」 山本さんは時間を気にしたのか、時計に視線をやると右手をサッとあげてから従業員入り口のドアノブに手をかけた。 ドアを閉める直前で、珍しく手を振ってくれる。 俺らも小さく手を振り、山本さんを見送る。 「ーーーーどう思う?」 「ん?」 俺が聞いて、要が聞き返す。 ーーー分かってるくせに。相変わらずズルい。 「ーーーー伊賀って人の死に方… …不自然だと思わないーーー? ーーーあの外階段ってーーーーそんなに危険な階段じゃなくねーーーー?」 俺が聞くと、要は黙って今度は少しだけ考える様な素振りをした。 チャラチャラしてるといつも言われる要は、本当は優しいし、いいヤツだ。 きっと優しい要は伊賀先輩の死に誰かが携わっていると思っていても、さっきの山本さんの表情を見たら、今は容易に「不自然だね」と、俺の意見への同意を口にする事すら躊躇ってしまっているのだろう。
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