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「「ーーーーーー…」」
俺と要はお互い、先ほどの湯川さんの声でびくつかせて上がった肩をそのままに顔を見合わせた。
澤田さん達警察はもう知っているのだーーー青木先生と湯川さんが、かつて恋人同士だった事ーーーー。
それにーーー津田先生のーーー…俺らが知らない一面まで知ってるーーーー。
「ーーーー…盗み聞きは感心しないな」
「「ッ!!!」」
驚いて後ろを振り返ると、澤田さんがタバコとライターを手に持った状態で立っていた。
どうやら店の影になるこの場所で、タバコを吸おうとしたらしい。
俺も要もバツが悪そうな顔を浮かべたまま、澤田さんと向かい合った。
澤田さんは俺らが未成年なのを気遣ってか、タバコとライターを、ため息と一緒にポケットにしまった。
「ーーーーいつから聞いてた?
ーーー君達の理想の女性を疑いたくはないけどーーー疑うのが俺らの仕事なんでね」
俺も要も「すみません」とそれぞれ口にして、頭を下げた。
聞く気が無かったとはいえーーー結果として澤田さんと湯川さんのやりとりを盗み聞きしてしまった事は変わりない。
「ーーーま…いいや……
…津田先生の事はーーー他言無用な。
…まぁ俺が言わなくても…こんな事中々…自分達からは口にできないか…」
「本当…なんですか…?
ーー…津田先生の…さっきの話…」
要が尋ねると、澤田さんはゆっくりと頷いた。
「あぁ……湯川さんの車と携帯にはGPS、家の各部屋には監視カメラーーーもちろん廊下や勝手口にもなーーーー
正直異常な束縛だと思うよーーー若くて綺麗な奥さんがいてーーー男関係に不安があったとしてもーーーねーーー」
「男関係…」と要が呟くと、澤田さんは慌てて自分の言葉を訂正した。
「ごめんごめん…!
…君達の言う湯川さんが本当に浮気をしてるとかそういうわけじゃなくて……
ーーーただただ津田先生は……そういう心配をしてたんだろうなって思って…
鞄に入れられそうな盗聴器なんかも家から出てきたしーーー湯川さんがどんなに津田先生と愛し合っていたとしてもーーーー
俺はここまでの束縛を全て受け入れるのは不自然かなと思ってるんだ」
澤田さんは困った様に笑顔を作り要にそう説明した。
要はなんだかホッとした顔をして、澤田さんに聞こえないほど小さなため息をついた。
「ーーー澤田さんはなんでーーー湯川さんを疑うんですかーー?」
俺はコレが聞いていい質問か、聞いてはいけない質問か分からなかったが、そう尋ねた。
嫌な顔をされるかなと思ったが、澤田さんは相変わらず穏やかな顔で答えくれる。
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