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「なんかーーーそんな曲あったようなーーー」
「え???」
俺は思わず口に出してから、その曲を思い出した。
そうだ。
呪術戦線0の、エンディング。
アレに確か、愛が体を蝕むという様な歌詞があった。
湯川さんは今まさしく、その状態なのだろう。
津田先生を愛していたからこそーーーその津田先生を亡くした湯川さんの悲しみはーーー湯川さんを蝕んでしまう。
現に湯川さんは最近、目の下にはメイクで隠していてもうっすらとクマが出来ていたし、お昼に食べるお弁当の量は少なかった。
この間なんて自分で持ってきたお弁当のおかずをーーーほぼほぼ捨てていたのを目にした。
もしかしたら湯川さんはあの日から、食事や睡眠が以前の様には取れていないのかもしれない。
そんな状態でーーー澤田さんにああやって疑われたらーーーーあの湯川さんでも声を張り上げてしまうのは理解できる気がした。
「あ、そういえばーーーー」
山本さんが思い出した様に声を上げた。
「昨日『澤田さん』っていう刑事さんが来てたよ。
私も色々話を聞かれたんだけどーーー澤田さんは本当は紺田と葛西に会いたかったみたい」
俺は驚いて、自分のロッカーの鍵を危うく落としそうになる。
澤田さんが昨日来てたのか。
「何を聞かれたんですか?」
俺が尋ねると、山本さんはその時の事を思い出す様に視線を上に向けた。
「それがーーーちょっとびっくりなんだけどさ…
ーーー…その…前話した伊賀先輩っていたでしょ?
…その伊賀先輩がーーー…売春をさせている話を聞いた事があるかって聞かれたの」
「売春……ですか……?」
俺が驚いて声を上げると、山本さんは頷いた。
「私は知らなかったんだけどーーー
伊賀先輩が未成年の女の子を売春させていたって証言した人がーーー工学部の生徒達から何人か出てきたみたいでーーー…
その澤田さんが言うにはーーーお金が欲しかったりお金に困ってる子にーーー売春しないかって声をかけてたんだってーーーー。
八本木のクラブでも目撃情報があったりとかーーー私は真面目な人だと思ってたけど、裏では結構派手に遊んでたみたいでーー…
自分でその女の子を買う事もあったらしいの」
俺は声を出せず、山本さんの話を聞いていた。
工学部の外階段から転落死した伊賀さんが女の子達に売春をさせていたーーー。
自分の頭の中に、ある一つの仮説がこびりつき、離れなくなる。
きっとそれはーーー澤田さんも同じなのではないだろうか。
「刑事さんがねーーー伊賀先輩にもしかしたら…美緒も売春をさせられそうになったんじゃ無いかって言ってたのーーーー
私はそれについては分からないって言ったんだけどーーー
伊賀先輩は美緒と食事に行くはずだったその直前に階段から落ちたーーーー
美緒に好意を持っていた津田先生が、伊賀先輩が美緒に売春させようとしてるのを知ってーーーーそれを止めようとして揉めてーーーー
誤って階段から突き落としたんじゃ無いかと思ってるって言うのーーー」
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