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「仲悪かったんですか?
ーーー伊賀先輩と、青木先生」
俺が尋ねると、山本さんはカフェオレに持ってきていた蜂蜜を入れて、味変をした。
「仲悪いとかってわけじゃ無いんだろうけど…
伊賀先輩がいつもの親しげな感じで…
『よ!青木!』って話しかけてもーーー
青木はいつもの感じでうざったそうというか、面倒臭そうというかーーーそんな感じだった」
俺の頭に、その情景がありありと描かれた。
確かに青木先生って、要が調子に乗って話しかけた時もそんな感じだった。
「教授〜!!!」
って要がふざけて話しかけた時、青木先生は「なんですか?」って真顔で聞き返していた事があった。
要はアレから青木先生が苦手になったと言っていたのを思い出した。
要曰く、「冗談が通じない」らしい。
「青木先生ってーーー昔から変わらないんですね…」
俺はそれが少しだけおかしくて山本さんにそう告げた。
山本さんもそれをおかしく思っているのか、俺と同じ様に少しだけ微笑んだ。
「ねーーーー。
頑固というか、なんというか……もう根がああなんだろうね…
30年もあのまま生きてるんだから、そうそう簡単には性格変わらないっしょーーー」
俺と山本さんはそう言って小さく笑い合った。
山本さんは残りのカフェオレを飲み、俺も出勤の準備をしようと、緑色のエプロンをつけて後ろの紐を蝶々結びにする。
要がいつも…締めすぎて不恰好になってしまうか、緩すぎて解けてしまって、苦手な蝶々結び。
アイツは何をするにも、極端だ。
「ーーー失礼します。
…すみません…遅くなっちゃってーーーー」
ガチャリと開いた休憩室のドアの方に、俺と山本さんは揃って視線を向けた。
見ると俺と同じ緑色のエプロンをつけたままの要が、そこに立っている。
雨が降っていたのか、要のパーマをかけた茶色い髪に水滴が付いている。
「おかえりーーー!
ーーー付き添いありがとね。
ーーー美緒は?大丈夫だった?」
要は山本さんに言われ、髪の毛についた水滴を払い落としつつ答えた。
「ただの貧血だったみたいですーーー。
ーーーやっぱり湯川さん…あんまり食べてないし…寝れてなかったみたいでーーー…
さっき家まで送ってーーー今日は病院で言われた通り、家で休んでもらってますーーー」
要の髪の毛から、細かな水滴が落ちた。
家に行ったのか…!…湯川さんの…!
俺はまた要に軽い嫉妬心を覚えつつ、要にノートを渡さなければと思い出した。
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