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だんだんと肌寒くなってきて、気がつけば要と湯川さんが病院に行ったあの日から、すでに2週間が経過していた。
あの日から湯川さんは一度も会社に来ず、俺も山本さんも湯川さんの事を心配していた。
湯川さんに連絡をしてみたという山本さんの話では、会社に迷惑をかけて申し訳ないと思っている事と、医師の診断では体調が戻るまではもう少しかかる事が、湯川さんらしい文章で返ってきたらしい。
おそらく湯川さんは貧血以外にーーー精神的にかなり参ってしまっているのだろうと、山本さんは話していた。
愛がーーー体を蝕むーーーーー。
俺は湯川さんの事を思う度に、この言葉ばかり思い出してしまう。
愛し愛されているーーー幸せな時は良いけれどーーーその人を亡くした時の痛みはまるで、愛し愛された分の副作用のようだった。
side effects
薬剤で言うところの、副作用ーーーー。
青木先生が専門でーーーー俺もゆくゆくは研究を進めていく分野において、よく聞く単語だった。
湯川さんはきっと今津田先生に愛された分だけのーーーー津田先生を愛した分だけのーーー副作用にーーーー心身を蝕まれているのだろう。
「……!!!」
今日は大学が午前中で終わり「エッジハウス」も定休日。
久々の予定の無い午後をどう過ごそうかなと考え玄関まで来てしまったが、数メートル先に要の後ろ姿を見つけた。
声をかけようかーーー…迷う。
俺はあの日ーーー要から湯川さんと同じ香りがしたあの日からーーー要をなんとなく避けてしまう。
まさか自分が湯川さんをーーーここまで恋愛対象として見てしまっているとは予想外だった。
要が湯川さんを俺と同じ様にーーー恋愛対象として見ているかは分からないけどーーー…それでも湯川さんの事を綺麗だの可愛いだのーーー
ーーー意外に胸あるだの言っていたのを思い出すとーーー…なんだかいい気持ちにはならない。
女性経験が皆無の自分と比較するとーーーどうしても要の方が優位に立っている様な気がして嫌になってしまう。
ーーーー湯川さんは今…現にーーー津田先生を亡くして未亡人だしーーーー…
そこまで考えて、俺は慌ててその不躾な考えを頭の隅に寄せる。
こんな事考えちゃダメだーーーそもそも夫を亡くしたばかりの女性がーーー別の男と恋愛関係になる筈ないーーーー
俺は意を決して、大きく息を吸い込んだ。
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