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「あ、もしかして恋バナ?」
図星を突かれた俺は一気に心拍数が上昇する。
本当の事を言われたからという理由の他に、俺が青木先生をわざわざ食事に誘い、恋バナなんてしてると思われたと思うと、途端に恥ずかしくなる。
「まさか…!…もっと……
…真面目な話だよ…!!!
研究の話とか…進路の話とか……!」
言いながら、俺はまた後頭部の髪の毛を触ってしまう。
雨谷は大きな目をにんまりと細くして、俺を見上げた。
「いや……嘘だねそれは…!
へぇ〜…葛西にも好きな人とかいるんだ…!
誰!?…同じ大学の人!?!?」
咄嗟に浮かんだ女性の顔を慌てて掻き消す。
「……いないって…!…好きな人とか…!
ーーーーーてか!…俺じゃなくて、青木先生の話だから!!!」
「え゛」
雨谷が発した予想外の声に俺は恥ずかしさから前にやった手の隙間から雨谷を見る。
「ーーー青木先生の恋バナなの…???」
「え゛」
今度は俺がさっきの雨谷そっくりの声を発してしまう。
ーーーー俺さっきなんて言った!?
「青木先生の話……って…
ーーー先生って彼女いたりするの!?」
雨谷の問いに、俺はまたやってしまったと後悔する。
まただ…。
困ってしまうーーー特に恥ずかしくなってしまうと、咄嗟に自分を守ろうとして、言っていい事悪い事関係なくその場で話してしまう悪い癖ーーー…
なんで俺はいっつもこうなんだろう…
要ならきっと、もっと上手く立ち回れるのに…
「ーーー…言っとくけど…昔の話だから…!
ーー…青木先生が……昔付き合ってた女の人の話してくれて……それだけ……!」
俺は誤魔化して、雨谷に説明した。
「え、どういう経緯でその話になるの?」
「牛丼食べに行って、その人ともよく食べたって話から、そうなった」
俺はもうおかしな事は言わないと、気合を入れてはっきりと説明する。
「で?」
「で、昔随分酷い付き合い方をしたから、また出会っても同じ様にフラれるだろうなって話で終わった。……以上!」
俺はそう言って、この話を終わらせる作戦に出る。
自分の話を更に雨谷に聞かれたらーーーまた恥ずかしさから余計な事を言ってしまう気がして、俺は話を終わらせようと早口になる。
「なによその『以上!』って……
でも面白い…うふふ…!
青木先生、やっぱ鈍感なのかもね〜
…酷い事されたからってさ、
必ずしも嫌いになるわけじゃないのにね」
「え?」
俺と青木先生が話しているのを思い浮かべているのか、本当に面白そうにしている雨谷に俺は聞き返す。
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