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「この間言ってた白衣…やっぱりクリーニングに出してました!!! …これです!!! クリーニング業者さんが、間違って医学部の白衣と一緒にしたらしくて…」 事務員の菅原さんは、綺麗に畳まれた真っ白な白衣を雨谷の前に差し出す。 菅原さんは色が白くていつもスーツを着ている、穏やかそうな男性だ。 要はよく物を無くして菅原さんにお世話になっているけど、俺は菅原さんが怒ったり嫌な顔をしているのを見た事がない。 「あーーーー!!! ……本当よかったです…! 無くしたと思ってハラハラしてたので… ありがとうございます!助かりました!」 菅原さんから白衣を受け取った雨谷はぺこりと頭を下げ、嬉しそうに笑った。 「いえいえ」と菅原さんは首を横に振って頭を少しだけ下げ、そのまま事務室の方に去っていく。 「よかったぁ…探してたの…! もうどこに行ったか、ホント分かんなくて…」 白衣を見つめて嬉しそうな雨谷に俺は思わず不思議そうな顔になる。 「そんなに? 白衣なら新しいの、それこそ菅原さんに言えば注文してくれるよ?」 俺の言葉に、雨谷は意味深に俺を見上げ、にっこりと微笑んだ。 「ーーーーコレじゃなきゃダメなのよ!」 「???」 俺がいうと雨谷は畳まれた白衣をひっくり返して、裏の側を俺の方に見せた。 「見てーーーコレふざけてね、ママの代わりにお兄ちゃんが私の名前を書いてくれたの…! アマヤメイって何故かカタカナだし、下手でしょ?」 確かにそこには、綺麗とは言えない字で書かれた、雨谷の名前があった。 まさか例の、雨谷の兄の字だったとは… 「お兄ちゃん今就職して県外にいるしーーーこんな汚い、変な字、レアだからさ!」 微笑んだ雨谷につられて俺もつい笑顔になった。 「ーーーそっかーーーー…よかったね」 こくんと頷いた雨谷は、何だかいつもより可愛らしい。 「うん! 私本当ドジだからさーーー気をつけなきゃ…! この白衣も本当自分でどこにやったか覚えてなくてーーー… 無い!って思ってたら、自分でクリーニングに出してるんだもんね…… 気をつける!!!」 雨谷はそう言って、ふたたびクリーニングされた白衣を丁寧に畳んだ。 そんな事したってすぐに実験室のロッカーに掛けてしまうのだけどーーーー今の雨谷はそれくらいその白衣を大切にしたいという事なのだろう。 「葛西!」 俺の数本先を歩いていた雨谷が振り返る。 目が合うと、雨谷はまたしてもにこりと微笑んだ。 「葛西ってやっぱりいいやつだね! 葛西の何でも話を聞いてくれそうな所ーーー私すごい好きだよ!!!」 「!?!?ーーーーあ…ありがと……」 「うん!じゃ、また!」
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