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「ーーー湯川さん、紺田、車前に寄せたって」 涼子さんに促され、私は仕方なく紺田君の車の助手席に乗った。 どうしようと、そればかりが頭の中をグルグルと回っている。 病院にーーー行くわけにはいかないーーー。 「ーーーごめんね紺田君…折角お店に来たのに…」 私はそう謝り、紺田君の横顔に目をやった。 スッと通った鼻筋と、長めのはっきりとしたまつ毛がそこにある。 「全然いいですよ。 ーーー具合大丈夫ですか? ーーー病院ーーーかかりつけとか、あります?」 紺田君は私の顔を見てから、ナビを入力しようとしてくれているのか、私との間に付けられたカーナビに視線を移した。 「病院はーーー大丈夫…! ーーー家まで送ってくれれば…寝てたら良くなるからーーーー」 「湯川さん」 私の声は、紺田君に遮られる。 なんとなくこの瞬間の紺田君が、私にはすごく大人に見えた。 一回りも歳下なのに、おかしな事だ。 「ーーー…一回ちゃんと見てもらったほうが良いと思います… 店長も言ってましたけど…湯川さんあれからーーー…ずっと体調悪いですよね…? 食欲も無さそうですしーーー顔色だって悪いですよ」 紺田君は私の顔を見て、はっきりとそう言った。 このーーー理由をちゃんと並べて、はっきりと意見する感じにーーーー私は今思い出したく無い人を思い出させられる。 「ーーーでも本当…大丈夫なの…!!! ーーー多分その…まだ色々とショックなだけで… 警察にも疑われたりとかするからーーー」 私はあの頃と同じように、駄々をこねる子供のように紺田君の提案を否定する。 私はこういう理屈っぽい男性の前ではーーーこうなってしまう法則でもあるのだろうか。 もしくはこうなってしまうようにーーー遺伝子に刷り込まれているんだろうか。 「そういう精神的な負担やショックが体に出てきてるじゃないですかーーー ちゃんと見てもらった方がいいですよ… 内科でも心療内科でもーーー受診しやすい所でいいですから、一度見てもらいましょう?」 諭されるように言われ、私は参ってしまう。 紺田君は私を見つめ、私の次の言葉を待っている。 なんでだろう。 この人にならーーーなんて。 そう思うのは、私の何が、そう判断しての事なんだろう。 もしかしたらーーーこの判断は錯覚かも知れないのに。 「ーーーー…妊娠してるの……」 「ーーーーーー…え?……」 自分でも驚くくらい弱々しくて小さい声が出た。 一回りも年下の男性を前にこんな声を出した事がとてつもなく情けなく思え、私は即座にこれを口にした事を後悔する。 「ーーーー妊娠してるのーーーー… ーーー…だから……病院には行かない……… ーーー…時期が来たら……落ち着くしーーー…… それにーーー警察には知られたく無いの……! だからーーー ……病院に…私を連れて行かないでーー…!」
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