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紺田君の目は、まばたきをする事を忘れていた。 ひどくカッコ悪い姿を見せてしまったのと、言ってしまったという不安から、なんだか、泣きたい気持ちになる。 「ーーーーー…分かりました…! ーーじゃあ、お家までの道教えてください。 ーーー住所でもいいですし、道案内してもらっても、どっちでもいいです」 あっさりと言われて、拍子抜けする。 聞かないのーーーー? なんでとかーーーー誰の子供かとかーーーー 「ーーーいいの? 紺田君ーーーコレ私ねーーー ーーー誰にも話して欲しくなくてーーーだからーーー」 「いいっすよ。 ーーー病院…行った事にすればいいって事ですよね。 ーーー大丈夫。ちゃんと内緒にします。 ーーー道、こっちで合ってますか?」 紺田君は私の顔を見ずに、カーナビに視線を向けて行った。 私は慌てて、次の次の信号で右に曲がる事を伝える。 「聞かないのーーーー? ーーー誰の子供かーーーとかーーー…いつからとかーーーー」 私が聞くと紺田君は顔を少しだけ私の方に向けて、小さい子供を見るように笑った。 「聞きませんよ…! ーーー湯川さんの子供なら、絶対可愛いから」 それしか言わずに、紺田君はまた前を見つめた。 それが私の心をーーー驚く程速いスピードで溶かしてしまう。 紺田君の車は僅か10分ほどで私とあの人が暮らしていた家に到着した。 紺田君は今は空いている私の車の横に車を駐車する。 心臓が、また、速くなる。 「湯川さんーーーーー? ーーー大丈夫ーーーですかーーーー?」 紺田君は私の顔を覗き込んで尋ねた。 深い焦茶色の瞳を見て、綺麗だなと思った。 「怖いのーーーーー」 私が口を開くと、紺田君は何も言わず、私の次の言葉を待ってくれる。 「あの人が亡くなってからーーーどこに居てもーーー… 特にこの家にいるとーーーー ーーーあの人の亡霊に見られてる気がしてーーー それで怖くて……! 眠れないの……食事だって……お風呂の時だって怖くてーーーー あの人の亡霊にーーー監視されてる気がするの……!」 自分がどうかしてる事は分かってるるし、あの人の亡霊なんて居るはずないって、そう思う。 でもどうしても怖くなる。 あの人は私とあの世でもーーー…一緒にいようとしてるんじゃないかって。 悪い私をーーー地獄から引きずり下ろしに来るんじゃ無いかって。
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