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それこそ今日は要もシフトに入っている筈だ。 帰りは今度こそーーー要とラーメンでも食べて帰ろうかと考えながら、俺は大学からエッジハウスまでの道を20分ほど歩いた。 エッジハウスに入る前にスマホを確認すると、1件ショートメッセージが入っていた。 ショートメッセージなんて珍しい。 滅多に触らないショートメッセージのアイコンを開き、画面を開く。 「ーーーーーー」 送り主は澤田さん。 そして、画面をスクロールしているうちに、だんだんと速くなる自分の心臓。 『葛西君。 雨谷さんの白衣の件、教えてくれてありがとう。 君の予想通り、雨谷さんの白衣を使い、リネン室に直接持って行った人物がいました。 警察もあの後かなり捜査人数を増やして操作にあたり、犯人が津田教授と一緒に居たという物的証拠も見つけました。 葛西君の協力のおかげです。 本当にありがとう。 俺は今から、犯人逮捕の為に大学に行ってきます。 葛西君、どうかどんな結果でも自分を責めないで欲しい。 君がした事は正しいし、俺が今しようとしている事も正しいんです。 君から憧れの女性と大切な学友を奪う事になるかもしれませんがーーーー どうか許して欲しいと思いますーーーー』 憧れの女性。 大切な学友。 この言葉が誰を意味するのか、考えるまでもなかった。 俺は慌ててエッジハウスのドアを開けた。 扉は大きな音を立てて開き、山本さんと松本が揃って俺の方へ振り返った。 「びびった……葛西…もっと扉は優しくーーー」 「山本さん、要、来てます?」 ため息と共に言いかけた松本の言葉を遮り、俺は山本さんに尋ねた。 「紺田ーーーー? 紺田なら今日…風邪気味だから休むって電話あったけどーーー それで松本に代わりに出てもらう事にしててーーーーー」 バイトをーーー休むーーーー。 要はまだーーー大学にいるんだーーーー 「???ーーー葛西、紺田がどうかしたの? ーーーなんか最近アイツおかしかったけど…なんかあった…? バイト終わってからも松本とも羽川とも喋らず急いで帰っちゃうしーーーー え!?!?ーーーちょっと!!! ーーー葛西ーーーー!?」 話途中の山本さんと、横で不思議そうに突っ立っている松本に俺は背を向け、従業員入口の扉を再び開けた。 「すみませんーーーー! 俺も急用思い出してーーーー帰りますーーー! バイト今度…今度必ず繁忙日でますから…なんでもしますから…今日はすみません!」 「え!?…葛西!?…ちょっと!!!」 俺は一方的に振り返って頭を下げると、止めようとする山本さんの言葉を振り切り扉を閉めた。 一瞬どちらに向かおうか迷った足を無理やり方向転換させ、早足で先程来た道をまた戻る。 湯川さんの自宅の場所は分からないーーー。 だからとりあえず大学に戻ってーーー要から話を聞かないとーーー。 要も湯川さんも絶対ーーー津田先生を殺してない。 2人ともーーーそんな事できる人間じゃない。 絶対ーーーなんかの間違いに決まってる。 それに要は津田先生が亡くなった時ーーー研究室で寝ててーーーーー
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