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そこまで考えて、俺は立ち止まった。
そうだーーーーーー…
湯川さんのアリバイは証明出来ないけどーーーあの人なら要があの時間に研究室に居てーー何かしていたと言うアリバイを証明できるかもしれないーーーー
俺は一旦止まってからスマホの電話帳を開き、1番最初に出てきた人物に電話をかけ、通話ボタンを押してまた走る。
出てくれと、祈るような気持ちでコール音が止まるのを待つ。
「ーーーーもしもし?ーーー葛西君?」
7回ほどコール音が鳴った後に、その人物の聞き取りにくい声が聞こえた。
そう。
青木先生。
先生は言ってたじゃないか。
「紺田君は机に顔を突っ伏して寝ていました」
って。
あの日の、あの時間帯ーーー1番要の近くにいたのは青木先生だーーーー。
寝てたとは言え、一緒の研究室に居たんだから。
「どうしたの?」
先生の声は電話越しだとより聞き取りづらい。
俺は少しだけ走る速度を落とし、呼吸を整える。
「要がーーーー要が警察にーー…
ーーー捕まっちゃうかも知れなくてーーー…
先生言ってましたよね……!
要が…研究室で寝てたってーーー…
その日ーーーその前か後にもーーー要を見たりしてませんか…?
もしくは要がーーー研究室の本を見たり、パソコン触った履歴があるとかーーーなんか備品を借りたとかーーーどんな事でもいいんですけど……!
なんかあったらーーー…澤田さんにそれを話してほしくてーーー…本当に……どんな些細な事でもいいんです…!」
頼みながら、こんな事しても無駄なんだろうかという考えが頭をよぎる。
要には確かその時間ーーー13時半に昼食を食べてから研究室に入ってる間のアリバイはあっても、津田教授が殺された12時頃から昼食を食べるまでのアリバイは最初から無い。
青木教授が万が一、要が研究室に入って眠る前に要を見かけていたのならーーー既にそれは澤田さんや警察に話をしている筈だ。
確実に言えるのはーーーこの時間に要が研究室で寝ていたのが本当ならーーー津田教授の遺体を雑木林に置いてくる事はできない。
だから要と湯川さんが仮に手を組んで津田教授を殺害したと澤田さんが考えているとしてもーーーー
要に殺害され亡くなった津田先生をーーー湯川さんが1人で運ぶなんて無理な筈だ。
その考えだけで俺はまだーーーもしかしたら要や湯川さんの無罪を証明できる可能性のある人物である青木先生にすがり、こうやって電話をしている。
こんな事をしても無駄かも知れないしーーーもしかしたら澤田さんが考えている様に、本当に湯川さんと要が手を組んで津田先生を殺したのかも知れないけどーーー
俺はその可能性を信じたくなかった。
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