178人が本棚に入れています
本棚に追加
/97ページ
「澤田さんのーーーおっしゃる通りです…
でも澤田さん…
澤田さんは私があの人をーーー誰かの力を借りてゴミ入れに入れたとおっしゃいましたけどーーーー
ーーーー…私はあの人を1人でゴミ入れに入れました…
ーーーだからーーーー
ーーーーー紺田君は何もしていません」
紺田君の顔を私はかろうじて見つめた。
紺田君の顔は血の気が引き、いつもの健康的な男性らしい血色では亡くなっている。
自分の好きな女性がーーー人を殺した。
彼の自律神経の働きは、正確だ。
ごめんね。
紺田君をーーーーこんなふうに傷つけてしまうなんて予想外だったの。
「1人でーーーーー?
…それは無理があると思いますよ…貴女それに…妊娠しているんですよね……?
その貴女が細身とは言っても…大人の男をあの袋形のゴミ入れに入れるのは……どうしても不可能だと思うのですがーーーー」
澤田さん困った様な顔をした。
問い詰めると言うよりは、いつからかこの人は私に接する時、諭す様な言い方をする様になった。
それはなんでだろう。
私が一度、この人に問い詰められて怒ったからか、それとも私を捕まえる時に湧き上がる、罪悪感からなのか。
もしくは私の周りのーーーちなみや葛西君ーーー紺田君の事を思っての事なのか。
「ーーーーゴミ入れのキャスターをロックして壁側につけてーーー動かない様にした状態にしましたーーー。
そのゴミ入れをあの人の前に置いた状態でーーーーーー
ーーーー私は後ろからあの人の心臓を刺しました。
そうして殺してーーーそのまま頭だけゴミ入れに突っ込む様になったあの人のーーーー
足だけを持ち上げて、そのまま袋に滑り込ませましたーーーー」
淡々と説明する私に、紺田君は声も出せないでいる。
澤田さんは息を飲み、そして細く息を吐いた。
「ーーーー随分計画的というかーーー難しい条件が揃わないといけないと思うのですがーーーー」
「その時はゴミ入れにあの人を入れるなんて考えてませんでしたーーー…
たまたまゴミ入れの前にあの人がいた時にーーーー私はあの人を刺してしまったんです……
ーーーーまるで神様が…今だ…って…
……そう耳打ちしたかの様に」
私が言うと澤田さんはなんだか寂しそうに目を伏せて、ダイヤモンドの入った袋をポケットにしまった。
「ーーーー神様ですか……
悪魔じゃなくて、神様ーーーーかーーー
…貴女はどうして……
ーーー自分の夫である津田先生を殺害したんですか?」
言われて考える。
私は最初の最初から、神様と悪魔の声を聞き間違えたのかも知れないと。
最初のコメントを投稿しよう!