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「青木さんはいないんですか?彼女」 カノジョ?ーーーーかのじょ? 俺の頭はフリーズしかけているらしい。 ーーーーー昔から友達と遊ぶより勉強ばかりしていた俺は、久々に生身の人間ーーーー まして自分が好意を持っている美緒という女性との会話に頭が上手く回らない。 「恋人、いませんか?」 コイビト…… 俺はそこまで考えて、小学校の頃、恋人のことを変人って書いて、クラスの奴らに大笑いされた事を思い出す。 恋人ーーーーー… 「ーーーーいませんっ!!! ーーー俺そんな人…いたこともなくてーーーー」 「ーーーーーー…」 うわぁぁぁぁぁぁ!!? さっきから何を言ってるんだ俺は!?!? いたことが無い…って!!! そんなの別にどうでもいい情報じゃないか!!! 普通に「いませんよ」って言えよ自分!!! 「いたことがない」なんて答えたらーーーー ーーー色々とその…モロバレじゃないか!!! 「青木さん」 「はい!?!?」 「ーーーー爬虫類、お好きですか?」 「ーーーーーは…爬虫類………?」 爬虫類……って…その…蛇とか、トカゲとか? 俺は今度こそ自分の頭と口が正確に動作する様、美緒の言った言葉を繰り返す。 「そうです。爬虫類。 ーーーーもしお好きか…もしくは嫌いじゃなければ……ちょっとお願いがあるんですけどーーーーー」 ーーーーーーーーーーーーー 「大人2名でーーー3,000円になります。 本日平日なのでお時間の制限はございませんので、ゆっくりとおくつろぎください」 「はーい…!…ありがとうございます」 「ーーーーー…」 入り口から入って直ぐの会計窓口で料金を支払うと、会計窓口の直ぐ横にいるフクロウと目が合った。 フクロウの大きな目に映る、俺と美緒。 フクロウは小首を傾げて、不思議そうに俺を見つめている。 ……あんまり見るな! ……こういうの初めてだから!!! 「ここにしましょうか」 美緒は店の1番奥の椅子に羽織っていたカーディガンを掛けた。 レースが施された、首が詰まったデザインの白いブラウス一枚になった美緒は、何だか最初にみたよりお上品に見えた。 「すみません……! …急にお誘いしてーーー… 私の友達みんなこういうコ達がダメで… ーーーなかなか来れなくって」 美緒は小さく頭を下げてから、首を左右に回して周りにいる動物達に目をやった。 カメ、ヘビ、トカゲーーーそれにフクロウ、ミミズクにホーク……更にハリネズミやモモンが…フェレットーーーーーー。 普段なら見る事も触る事もない様な生き物達が、スペースを区切られてずらりと並んでいた。
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