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「ーーーー…あんまり… …女性は得意じゃなさそうですもんね…」 俺はまたもメニュー表を見ながらそう告げた。 彼女がこういうーーーエキゾチックアニマルという類の動物が好きな事が何だか意外だった。 「そうですよね…! …私の同じ学部の友達は見るのも嫌で…動物園でもこういうコーナーは迂回していきます」 美緒は笑ってから「コレに決めました」とメニュー表にある豆乳ホワイトチョコラテの文字を指さした。 俺もそれを見て自分もミルクココアを選ぶ。 何だか珍しく、甘いものが飲みたくなってしまう。 注文は美緒がしてくれて、こういう時は男がした方が良かったのかななんて考える。 「……!!! みてください!このコ!!」 椅子についさっき座ったはずの美緒は身を屈め、黒色と白色の毛が所々混ざったヒョロ長い生き物を抱き上げた。 コレは知ってる…フェレットだ。 フェレットは大人しく美緒の手の中に収まり、俺を不思議そうに眺める。 「ーーー青木さんに似てません?」 「ーーーえ゛!?……そうかな…?」 「すっごく似てますよ。 ーーーー目元とか、口元とか」 俺は美緒が抱くフェレットの顔をマジマジと見つめた。 確かに離れ目気味の一重瞼だしーーー 唇も薄いし…ーーそれに輪郭もほっそりとしている。 「可愛いです。 ーーー抱っこ、してみます?」 美緒は俺の前に、フェレットをそっと差し出した。 美緒の見様見真似で、俺はそのフェレットを抱っこする。 フェレットは人に慣れているらしく、俺の腕の中でも大人しくしている。 「うん…可愛い」 一言、自然に言葉が漏れる。 「ーーー青木さんも可愛いです」 「!?」 「うふふーーー最初見た時から気になっちゃって……次お会いしたら、絶対お話ししてみようと思ってました」 美緒は微笑んだかと思うと、スッと俺の横をすり抜けて、今度は水槽の中にいたヒョウモントカゲモドキを出してもらい、触っている。 俺は美緒の言った言葉を頭の中で繰り返しながら、自分が何とも言えない、浮き立つ様な幸せな気持ちになっている事を自覚する。 美緒がーーー自分の存在を気にかけてくれて、話してみたいと思ってくれていた。 その事実はとてつもなく幸せで、それが顔に出ているのか、腕の中のフェレットは俺の黒縁メガネの奥を覗こうと顔を近づけてくる。 俺は少し離れた位置でトカゲを眺めている美緒に視線を移した。 黒目がちに小さい顔でーーー俺の想像する爬虫類のトカゲより可愛らしい顔をしている、ヒョウモントカゲモドキ。 目を閉じると二重の様な線がついていて、なんだか人間みたいだなと思う。
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