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「青木さん」 ヒョウモントカゲモドキを手に乗せたまま、美緒が振り返る。 「…これからも私と……こうやって一緒にお出かけしてくれますか…?」 美緒に尋ねられた俺は、一瞬その言葉の意味を問おうと声を出しかける。 しかし、腕の中のフェレットに突然指を軽く噛まれ、俺はその言葉を飲み込む。 「何聞いてんだ!」 とでも言うように、フェレットの黒目がちな目が、キッと釣り上がってるような気がした。 「ーーーーー…俺でよかったら……喜んで……」 俺がそう言うと、美緒は嬉しそうに笑い「よろしくお願いします」と頭を下げた。 俺達はこの日を境に時間が合えば一緒に出かけ、どちらからともなくーーーーと言うのは嘘で、美緒からはっきりと告白をされて付き合うようになった。 美緒は良く言えば自分の意思をしっかり持っているタイプでーーーー悪く言えば頑固だった。 それに掴みどころが無く、自由でマイペースな所があると思いきやーーーー俺が研究に没頭して連絡を3日も4日も返さないと直ぐに怒った。 「3日も4日も連絡返さないのは普通じゃないよ…」 同じ研究室の瀬尾(せお)に叱られ、俺はそれにすごく驚いてしまった。 瀬尾は俺と美緒が付き合っている事を、俺の周りでは唯一知っている人物だった。 俺は美緒と付き合ってから、周りに美緒との事で揶揄われたり、色々聞かれたりするのが苦手だと美緒に打ち明けた。 それを聞いた美緒は 「じゃあ、大学では話したり、一緒にお昼を食べたりはしないようにしよう」 と、人差し指を立てて微笑んだ。 その単純な作戦は意外にも効果を発揮し、俺達が付き合っていると言う事実は、美緒の信用できる友達極数人と、瀬尾くらいにしか知られることはなかった。 俺達は気がつけば付き合ってから3年程が経過して、美緒は大学四年生、俺は大学院の修士課程を学ぶ、大学院生になっていた。 俺は大学院に進んでから、更に研究が忙しく、こなさなければいけない事ばかりが増え、美緒と連絡を取らない事が多くなっていた。 美緒を好きになって、恋愛というものを経験してもーーーー俺は相変わらず不器用で、研究の時は研究で頭がいっぱいになってしまう。 それで美緒と何度も喧嘩をした。 何度も喧嘩した挙句、美緒より研究を重視する寂しさから美緒を時々泣かせてしまった。 でもその度に連絡を返さない自分が悪いのに、優しい美緒は結局最後、俺に対して怒ったり、泣いたりした自分を顧みて「ごめんね」と言って俺を許してくれる。 本当に悪いのは、俺なのに。 「外国で良い研究者を沢山育てるんだもんね。 それで良いお薬を、沢山作るんだもんね」 そう笑って、結局俺を許して、俺の狭いアパートのベットで一緒に眠ってくれる。 美緒と一緒に寝たら少し狭いベットで、俺と美緒は時間が少しでも合えば、合えなかった時間を埋めるように身を寄せ合ってくっついて眠った。
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