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そんな風に喧嘩しながらも俺は美緒と愛し合い、毎日を積み重ねた。 喧嘩をしても美緒が大切な事には少しも変わりなく、俺と美緒はその年の夏休みに、一緒に貯めた貯金を使い、2人で少し足を伸ばして沖縄に旅行に行った。 沖縄の海は美しく、海が好きな美緒は終始笑顔だった。 楽しかった夏休みが終わり、校庭の葉っぱの端っこがが赤や黄色になってきた頃、俺は工学部全体の研究発表会に参加する為にその準備に追われていた。 小さい頃から俺が最も憧れ、今はアメリカで教鞭をとっている真木(まき)教授やーーーテレビにも顔を出すような有名な人も来る発表会だと聞かされた俺は、事前に美緒に断りを入れた上で、かなり力を入れてその研究発表会の準備に取り掛かっていた。 やっとの思いで発表会の準備を終えーーー研究発表会も明日と言う時、俺は実験室から近道をしようと工学部の外階段を登って研究室へ戻ろうとしていた。 「よぉ」 階段を登ろうとした時に上から声がして、俺は驚いて顔を上げた。 伊賀だ。 伊賀翔也ーーーコイツも大学院に進学したのは知っていたけどーーーー所属する研究室が違うから顔を合わせるのは随分久々だった。 「ーーーーーお疲れ様…」 俺はそう告げてやり過ごそうと目を合わせないようにやや俯き、伊賀の横をすり抜けようとした。 「青木、美緒と付き合ってたんだな」 「ーーーーーー!!!」 突然言われ、俺は思わず足を止めて伊賀を見つめた。 伊賀はいつもの伊賀とは何となく違うーーー黒いものを湛えている様に俺には見えた。 「ーーーーなんで?」 俺はイエスともノーとも言わずにそう聞き返す。 伊賀は何聞いてんだとでも言うかのように、誤魔化しやがってとでも言うように、小さく笑った。 「この間、美緒がお前の家に入るの見たんだ。 ーーー研究にしか興味がないと思ってたけど…そうでもないんだな」 伊賀の口調は俺の知っている伊賀の口調より、随分と棘のある言い方だった。 もしかしてーーーー 伊賀も……美緒が好きなんだろうか。 「ーーー付き合ってるよ…。 ーーー騒がれるの苦手で、言わなかっただけでーーーー」 「俺今日、美緒と食事に行くんだけど」 突然の告白に俺は声も出せずに伊賀を見つめた。 いやーーー待て…伊賀と美緒は幼馴染だ。 食事くらいーーー普通にするかもしれない。 「コレーーーなんだと思う?」 伊賀はそう言って手のひらに乗せたサプリメントのような錠剤を俺に見せた。 「ーーーー? ーーーーー何ーーーーー?」 伊賀はその整った顔の唇を片方だけ引き上げた。
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