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レストラン『ボルカニカ』の前で待ち合わせ。
翔也はそう言ったのに、1時間経っても2時間経っても待ち合わせ場所に現れなかった。
翔也と食事をするなんて中学校に進学したばかりの頃、お互いの母親と一緒にサイセリアに行ったのが最後だった。
久々に色々な話ができると楽しみにしていた私は結局翔也に会う事はなく、こんな時に携帯を紛失してしまう自分を恨めしく思いながら家に帰宅した。
「ただいまー……」
家に帰って、靴を脱ぎながら私は呟いた。
翔也とご飯食べてくるから、夕飯要らないって言ったのにーーー夕飯…私食べるのなんかあるかな……
そんな事を考えつつリビングのドアを開けて直ぐ、顔面蒼白の顔で立ち尽くす母親の姿があった。
「ーーーーーあ……美緒………」
母の声は震えている。
私は母の、今までの人生で一度も見たことのない顔の青さに、直ぐ様母に駆け寄った。
「お母さんーーー…?
……どしたの…?
……ーーーなんか……なんか…あったの……?」
聞いておきながら、この答えを聞くのが怖い。
私は何を聞いても平気な様に、覚悟を決めて、母の顔を見た。
「ーーーー美緒……貴女……
ーーー翔也君とごはんなんじゃーーーー…」
「そうだけど…!
ーーー翔也待ち合わせ場所に来なくて…私携帯こういう時に限って無くしちゃってさ……
帰ってきたの…!
だって2時間待ってもーーー翔也来ないんだもん…!
ーーーーそんな事より、どしたの…!?
ーーーーお母さん、顔真っ青だよ!!!」
震える声で搾り出す様に問われ、私は被せる様に一気に答え、詰め寄った。
私の事なんてどうでもいいから、何があったのか教えて欲しい。
なんでそんなーーー青い顔で震える声を出さなければならないのか。
「ーーーー美緒ーーー……
ーーー……落ち着いて…聞いて…
少し前にお母さんの職場に……
…警察から電話があってーーー
翔也君がーーーー亡くなったのよーーー…」
「ーーーーーーー……」
翔也君がーーー亡くなったーーーーー…
私は母のその言葉を頭の中で繰り返す。
母の言葉の意味は分かるのに、体も心も、頭もーーーその日本語の意味を受け入れようとしない。
受け入れる事ができない。
母は言葉を発せずにいる私の肩に手を回し、私を抱きしめ、泣き始めてしまった。
「…大学のねーー…階段から落ちたらしいの…
見つけた先生が救護をしたんだけどーーー
…病院に搬送される時にはもう亡くなってたってーーーー…
淳子さんの事ーーー私もう見てられなくてーーー…」
淳子さんというのは、翔也のお母さんの名前だ。
私も冷たくなった指先で、母の背中に手を回した。
手にーーーー力が入らないーーーーー
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